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「触っていいですか?って聞いてないですよね!?」(大阪府迷惑防止条例) 傍聴小景#42
とてもいいことなのですが、昔に比べて痴漢事件の裁判って減ったと思います。感覚値ですが。女性専用車の導入、SNSの普及やスマホカメラですぐ撮影する癖などで情報が広がって逃げるのは超絶困難、コロナの影響で電車が混むことが減ったなどなど色々と要因は考えられます。
とは言っても、根絶はされていません。逆に考えると、こういう環境下でよくやろうと思うよなと思ってしまいます。
いろんな対策や条件が整っていても、それらを超越して行動に移してしまう人ってのはいるので、気をつけましょうねという話です。
はじめに
罪名 :大阪府公衆に著しく迷惑をかける
暴力的不良行為等の防止に関する条例違反
被告人:30代の男性
傍聴席:平均5人(2回)
学年は私と全く同じ歳(今年で38歳)であった被告人。30~40代の被告人というのは山ほど見ていますが、やはり自分と全く同じだと、それはそれでやはり考えてしまうものはあります。
ただ、この被告人はもう少し若いものだと思ったのが第一印象でした。幼めの容姿というのでなく、なんというか社会人特有の覇気というか、雰囲気があまり感じられないんですよね。スーツも着てて、バリバリ会社員なのですが、何を考えているんだかさっぱりわからない人でした。
そしてその、「何を考えているかわからない」というのは裁判の最後まで印象が崩れないわけなのですが。
事件の概要(起訴状の要約)
・被告人は電車内にて、Aさん(20歳女性)のでん部(お尻)を衣服の上から手の平で触った疑い
・被告人は上記の一週間後、別の電車の改札にて、同じくAさんのでん部を衣服の上から手の平で触った疑い
同じ人に別の場所で2回やるという結構珍しい事案です。それほどまでに好みのタイプだったのでしょうか。
それにしても、駅の改札で痴漢行為をするという情景が思い浮かびません。そりゃあラッシュ時など改札も混みますけど、まぁバレますよね。この時点では謎なことだらけです。
検察官が証拠として提出した資料や供述など
・電車内でAを見たときに劣情(いやらしい感情)を覚えて触った
・最初の犯行で腕を掴まれて「やったやろ?」と言われ謝罪したところ釈放された
・取調べに対しては、「私を捕まえるために、つきまとういたずらをしたのではないか」などと被害者が誘ってきたと供述した。
被害者の供述
・やたら見られていると感じ、そのまま体ごと押し付けられるように触られたので、手を掴んで「やったやろ?」と言った
・2回目も触られたので見たら同じ人で驚いた。「やめてって言ったやん」と言ったが、何も言わなかったので駅員室に連れて行った
・被告人が、触るように仕向けていると言っていると聞いて驚いているし、気持ち悪いし、許せない
「私を捕まえるために、つきまとういたずらをしたのではないか」
どんな文化に触れてたら、こんな発想になるのでしょうか。同い年を代表して、私が代わりに謝らせていただきます。後に撤回して、全面自供しているんで、当然そんなことはなかったようなのですが、途中まではこれで乗り切るつもりだったのでしょうか。
被害者も驚いたというか、パニックになったんじゃないでしょうか。こういう心理的な二次被害は被告人には到底理解できないだろうなと思います。
被告人質問 ~「僕も常識はあると思ってるんで」~
まぁ一応、被告人の言い分を聞いてみましょうか。というか、何考えてんのか聞きてぇし。
弁「今回の件、どう思ってます?」
被「被害者の方には申し訳ないことをしたと」
弁「誘ってきたと話した根拠はなんなのですか」
被「アイコンタクトや身振りなどの
ジェスチャーでそう思った」
「坊や、いらっしゃ~い」みたいなジェスチャーがあったということでしょうか。被害者、20歳ですけどね。
もし、100万歩譲って、本当にそういうジェスチャーがあったとしましょう。でも、それで行くやつはバカです。妄想は「月曜のたわわ」の中だけで完結させておいてください。
弁「当初、同意があれば痴漢にならないんだ
と言っていたようですね」
被「はい、そうです」
弁「同意があろうがなかろうが、
今後絶対に触ってはいけないですからね」
被「はい、わかりました」
「あろうがなかろうが」はよく使う言葉ですが、同意がなく触るというのは論外過ぎて少し面白かったです。
さて、被告人は同意があれば痴漢にならないんだという主張のようですが、これ自体はあながち絶対嘘とも言い切れないようです。本当に同意があって、犯行時も本当に嫌がっていないなど、様々な条件が必要なようですし、今回は特にありえないと思いますが。
また、その犯行対応によっては、「公然わいせつ罪」の成立もありえるとのこと。これは直接陰部を触るなどの行為のようですが、まぁなんにせよ公共の場でよからぬことをしていいはずがありません。それくらい、わかってくれ。
弁護人からの質問は、これくらいで終了。棒読みでしたけど、一応反省の言葉も引き出したしということなのでしょうか。
続いて検察官です。
検「現時点でも、
向こうが誘ってきているからだと思ってます?」
被「そういうことになりますね」
あっ、なるほど。弁護人が深掘りしなかったのは、被告人がまだこの認識でいるからなんすね。あわよくば、検察官の触れないでくれと願ってたんじゃないでしょうか。
検「電車で女性と目が合うこともありますよね」
被「あまり、ないです」
検「でも、ありますよね!
目が合うたびに触るか考えるんですか?」
被「いや、目線だけでは…」
検「今回、あなたの言う身振りというのはなんなのですか」
被「・・・・・・(黙秘)」
言えや。黙秘権が与えられてるのはわかるけど、言えや。
ここから、おとぼけモード全開です。
検「被害者と初対面ですよね」
被「そうです」
検「触っていいですかって聞いてないですよね」
被「はい」
俺(事前合意の確認としても質問の仕方w)
検「聞いてもないのに触っちゃダメと思わなかったの?」
被「まぁ、多分大丈夫かなと思いました」
検「2回目も大丈夫と思ったんですか?」
被「そのときは思いました」
検「一週間前に怒られてるのに?」
被「そう思ってました」
検「そう思うには、なにかあったのでしょ?
それを教えてくださいよ」
被「・・・・・・・(黙秘)」
好き勝手言って、肝心なところは黙秘になるコンボやめろ。からかってるのか?
検「お尻を触ったあと、あなたは何か言いましたか?」
被「いや、なんか怒ってるのを聞いて
驚いて何も言えませんでした」
俺(怒ってる認識はあって、
なんでまだ誘われたと思ってんだよw)
検「一般的に考えてね、電車で見ず知らずの女性に
ジェスチャーで誘われたって聞いたら、
普通はどう思いますか?」
被「いや、通常では考えられないですよね。
僕も常識はあると思ってるんで」
よっ!さすがは38歳、常識人!
このときの凍り付いた法廷の雰囲気、皆さんにお届けしたかったです。弁護人さん、目を背けちゃダメだ!
普段、自分の記事って、さすがに細部を突っ込まれたくないんで、関係者の人にはあまり見られたくないなぁと思ってるんですけど、これに関しては被告人にもどうぞどうぞだわ。どうかこの記事を見て、どう思うか気になるところです。
その一方で、被害者の方には絶対見られたくないです。自分が本当に精神的苦痛を与えてきた男が、こんな答弁に終始しているとなると、どう怒ってよいのやらと思うでしょうから。
判決 ~一応、被告人の意見も聞きます~
主文 罰金五十万円
被告人は故意を否定しているように思えるが、初対面で見ず知らず男性へそのような行動をとるなどの主張は到底認められず、事実の捉え方にいささか問題が見受けられる。
裁判長が判決の理由を宣告するときに、「なお、被告人は被害者から誘われたと供述しているので、「一応」その点について検討する」みたいに、「一応」とつけられているのが最後までこの裁判っぽいなと思ってしまいました。
結局、終始表情に出さず、ぼーっとした答弁を繰り返す被告人の真意は掴めなかったですが本質的に反省はしてないのだろうと感じました。
とりあえず言葉では言えるんですよね。で、その「反省しています」って言葉自体は本心だとは思うんです、多分。でも、「なぜ反省しなければいけないのか」、「今回のことでどんな被害が発生しているのか」というのを本質的に把握していないと、ただ言ってるだけになっちゃいますよね。
裁判としては「いやはや、なんとも」という感情にしかなりませんが、この人が社会で今後同じ犯罪を犯さずにいられるのかと考えると、なんとも頭の痛い思いをしました。
今回の記事ですが、YouTubeにもしております。
是非、こちらもご覧ください。
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