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第8回ゲスト:森山千代さんと竹内日菜乃さんと狩野瑞樹さん(三転倒立)「ライフワークの1つに演劇があるということが、創作の理想ではある」 聞き手:葛生大雅

年始に王子小劇場で開催される『見本市』
活動最初期にあたる9団体を選出し、ショーケース型の公演を行います
【公演詳細】
「見本市2024」
2024年1月5日(金)〜9日(火)@王子小劇場

みなさん、はじめまして。インタビュアーの葛生です。
みなさんが今回の見本市で、初めてお目にかかる団体の、
お芝居の魔法に、より染まっていただきたく思い、
「見本市2024」に参加する方へのインタビューをしてきました。
第8回目のゲストは三転倒立の森山千代さんと竹内日菜乃さんと狩野瑞樹さんです!

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【ゲストプロフィール】

左から狩野さん、森山さん、竹内さん

狩野瑞樹 

三転倒立所属三転倒立では主に劇作と演出をしています。つまずきがちです。
Twitter
https://twitter.com/warabimotimot

森山千代

三転倒立共同主宰
家の本棚が倒壊したことがあります。
Twitter
https://x.com/bavuyochi

竹内日菜乃

三転倒立共同主宰
お米とお味噌汁が好き。滝行経験あり。
Instagram
https://www.instagram.com/sigure.13/
Twitter
https://twitter.com/o_hisama99

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他の役者さんに手伝ってもらいながら

森山:森山千代です。竹内日菜乃と一緒に、共同主宰をしております。
   三転倒立は桜美林大学の人間がほとんで、うち一人が多摩美の人間です。
   2022年の4月に旗揚げがあり、そこから継続的に活動している団体です。

   2022年9月に番外公演があって、今年6月に第2回公演があり、過去に計3回の公演を打っております。
   脚本・演出・役者などで狩野瑞樹、舞台美術で板谷有紀子、制作で安藤保佳がいます。竹内日菜乃は役者と宣伝美術をやっており、私が役者と演出助手をやっています。

竹内:団体内に役者がたくさん所属しているわけではないので、基本的に2022年の番外公演以外は、客演という形で、他の役者さんに手伝ってもらいながら稽古をして、作品を創っていっています。

――皆さんの好きなものなどあれば、聞かせてください。

狩野:僕はラジオと漫画を結構読んだり聴いたりしてきました。そうやって夜更かしをして、若干生活習慣が悪くなってしまいました。

竹内:私はお味噌汁とお米、絵本がとても好きです。児童文学もすごく好きで、久しぶりにくまのプーさんの映画を観たら、文字が降ったりするなど、発想がすごすぎて。
   ぷーさんたちが穴に落ちてどうやって出ようという時に、空から降ってきた文字を「梯子にすればいいんだ」と外に出て行ったり、「すぐに戻る」と書置きをした時に、文字をしっかり読めないので怪物に連れ去られたと勘違いして、それを倒しに行くぞとなったりして、ワクワクしました。
   「それもありなんだ」という気持ちになりました。

森山:私も小説や漫画が好きで、家に読み切れないのにいっぱい買ったものがあります。
   それ以外だと、ご飯を作るのが好きです。一人暮らしで自分しか食べないんですけど、何か月か前に初めて土鍋でご飯を炊いてみたり、杏仁豆腐のキットで杏仁豆腐を作ってみたり、「料理ができるようになった」とすぐ言えるようなのが、一個一個たのしいなと。
   忙しい時にはコンビニで買っちゃったりするんですけど、作ってみるとたのしいなと思いました。
   基本的に硬いごはんが好きなので、炊飯ジャーだと水を少なくすると硬すぎたりするんですけど、土鍋で作るとイヤな硬さじゃないというか、おこげもついたり、特別感があって素敵だなと思います。

   安藤は猫が好きで、飼っています。あとは、松下洸平さんのすごさをすごく語っていたり、好きみたいです。
   板谷はお洋服がすごく好きで、K-popも好きみたいです。アニメやゲームや配信者も見ているし、手広く好きな印象です。

狩野:前に、色んなものを好きになりすぎて困るという話を聞いたりもしました。
   広く好きなものがあるみたいです。

団体のお陰で楽しくやってこれたな

森山:団体は、私と竹内がカフェで「なんかやりたいね」と話したところから始まりました。
   大学の最初がコロナ禍一発目のタイミングだったので、Zoomで授業をしていて、それ以外でもよくZoomを繋ぐ8人くらいの中にいた2人で、その後にも、学校のスタジオで小屋入りしたのが初めて対面で出会った始まりでした。板谷も美術班で別の部署で、安藤も小屋入りして出会いました。
   狩野くんは演技系の授業で一緒になって、一方的に「面白いな」「素敵なお芝居をする人だな」と思って、竹内とカフェで「誰と一緒に芝居をやりたいか」と話した時に、私が板谷と安藤と狩野くんの名前を挙げました。その時には殆ど話した事がなかったんですけど、授業の後に竹内と二人で突撃しに行って「一緒に団体をやりませんか」と話したのが、結成のきっかけでした。

狩野:僕は今多摩美の学生で、その前には桜美林の学生でした。3年生の時に編入して、桜美林の時には誰とも交流をとっていなかったのですが、その頃に話しかけてもらって、自分で演劇をやるということも、団体のお陰で楽しくやってこれたなと思っています。

人と人はほんとうに一緒にいられるか

狩野:団体では「人と人が一緒にいられるか」という内容を扱うことが多いです。
   時々によって細かく「どんな人と一緒にいられるか」「これが出来ないけど、一緒にいられるか」「壊れた関係で一緒にいられるか」など変わるのですが、最終的には「人と人はほんとうに一緒にいられるか」というところに、創っているうちにそうなっていくことが多いかなと思っています。

   だいたい半分か6割7割出来た台本を持っていって、「どうですかね」とみんなで話し合うことも多いですかね。

森山:「この後どうなると思いますか」とよく狩野くんが聞いてきて、みんなで「どうだろうね」と考えていることがある印象です。

狩野:終わらせ方に若干迷うというか、プロットを緻密に組み上げて書く方ではないので、場当たり的に書いていって、「僕も分からないんですけど」と言って持っていったりします。
   一人でもう書けないなとなるよりは、「こんな感じなんですけど、どうですか」と。凝り固まっていない状態で読んでもらって、というのもあります。

竹内:狩野くんという脚本・演出をやってくれる人がいるので、狩野くんが持ってきた種と言うか、パンの材料をこね回して、「こうなったね」と思いながらいつも稽古しています。

狩野:団体で「書ける人って誰」となって、僕が団体で書くようになりました。

森山:誰が書いて演出するかという話に旗揚げの時になり、毎週何曜日のお昼休みにお昼ご飯を食べていた時期があって、まだ狩野くんの脚本・演出を軸にやると決まっていたわけではないのですが、そこで私と竹内と狩野くんで何をやりたいかとプレゼンみたいな感じで話したところ、「狩野くんの持ってきた話でやりたいね」となったのが始まりで、そこからどんどん狩野くんがずっと書くようになってきました。

   そこで団体の一発目と考えた時に、私と竹内が持ってきた内容が若干ハードだったので、一発目でやるのは狩野くんのが良いと満場一致で決まりました。

どういう時に泣いていたかな

狩野:今回の作品は、構想自体はもうあって、「泣く」ところにフォーカスしています。
   それプラス、「これを観て泣けなかった」「感動出来ない」というのが軽い悩みとしてあると思うんですけど、それ自体に対して「あー」っと思う瞬間があるなと思っています。
   演劇を観ても、自分だけが面白くないと思ってしまったとよく思うんですけど、感動が出来ないことや感受性が豊かではなくて空っぽな人という形容のされ方をされることを中心に、話が展開されています。
   毎回脚本を書く出発点が薄めというか、ワンシチュエーションで「こういう人とこういう人がいるよ」と始まることが多いんですけど、今回は自分や周りが思っていることから始まることが多いです。個人的にどんどん泣けなくなってきたという実感があり、子供の頃は色んなことにちゃんと感情的になって泣いたり怒れたんですけど、どんどん出来なくなって、したくても出来ないくらいになり、そこから創っていっています。
   それから、友達の友達に「これを観たら絶対に泣ける」という動画を持っている人がいるんですけど、その人も泣くことでストレスを発散していたのが新鮮味なのか慣れなのか、今までずっと泣けていたものに泣けなくなったという話を聞いて、悲しいというのでもないのに泣いていたこともあって、科学的なメカニズムというよりも「どういう時に泣いていたかな」「どうして泣くのかな」と気になることが連続しました。
   演劇をやる前には「泣く演技を出来る人が上手い」というのが素人目にあったのですが、あんまり泣かないなというのがあったり、今回で泣こうと思ったりするわけではないのですが、そうした経緯で今回は「泣く」ことを扱うことになりました。

   仮タイトルが『なみだ』で、本タイトルもこれになるんじゃないかと薄っすら思っています。
   出演は今のところ3人です。客演1人と、竹内と森山が出演者です。

森山:企画書や涙の話は聞いていたのですが、詳しい話はまだ聞いていなくて、今話を聞いて「ほえー」と思っています。
   「泣けない」というエピソードを聞いて、涙に関しても色々あるなと思いました。

竹内:今回の企画書が今までと違うと思ったりしていたのと、私も涙の話について悩み、色々思ってきているので、今までの自分のことを反映できる作品になるかなと勝手に思っていたので、すごく楽しみです。

森山:作品の稽古としては、いつもは週3~4回の稽古で始まって、一カ月前に週5~6回の稽古になっていきます。
   みんな授業があり、どうしても稽古が18時~22時までしか出来ないというのがあり、集中の一カ月間というのが続きます。

狩野:週5~6回とはなっていますが、全然休みます。
   個人の都合や体調も含めて、予定として週5~6回はありますが、どちらかというと減ることの方が多い気がします。

手放してやらないぞ

狩野:僕の地元が岩手の盛岡で、盛岡は演劇の文化がどちらかというと盛んで、働きながら演劇を続けている人が多いんです。
   働きながらや、何かをしながら、演劇を続けていけたらいいなと思っています。
   肩肘を張らずに、ライフワークの1つに演劇があるということが、創作の理想ではあるなと思います。
   これからメンバーがそれぞれどのタイミングで何をやっているか分からないので、その時々で思っていることややりたいことが上手いこと出来る団体になっていけたらと思っています。

   見本市2024を通して、お客さんを増やしたいということも感じています。
   ショーケースという形で色んな団体さんがいるので、同世代の若い皆さんとの交流を図れたらと思います。「自分たちだけが演劇をやっているわけじゃない」という気持ちになれたらという思いもあります。

森山:「みんながその時何をしているか分からない」という話で言うと、私は就職が決まっていて、これからのことは分からないのですが、今回の見本市2024での芝居が最後の芝居かなと若干思っていたりもします。
   ただ、どこかでそういったことを考えながら、狩野くんが言っていたようにライフワーク的に続けていきたいとはずっと思っています。
   今までは役者としての関わり方をしていましたが、そういった関わり方が出来なくなっても、「なんか稽古場にいる人」という形であっても、創作するということをやめないでいたいなと感じています。
   前回の公演が終わった後から、私たちの中でもそうですし、観に来てくれた人やスタッフさんからも含めて、「三転倒立の人だ」と言われたことが多くて、前の小屋入りの時に「胃薬ってこの世に無い薬だと思っていた」と音響チーフの子に言った時に「三転倒立の人って感じがするわ」と言われたりしました。私たちの中でも「私たちってやっぱりこういう人だからさ」という会話が生まれたり、森山千代という名前の前に「三転倒立」と出たりするようになったのが嬉しくて、若干「手放してやらないぞ」という思いがあります。続けていきたいです。

竹内:私も二人と一緒で、生活の一部にしていきたい感じがあります。
   何かを成すということも一つの目標ではあるんですけど、私たちは一つの目標に向かって頑張るというより、各々の生活をする中で「これはどうにもならない」ということがあっても、「でも、これを三転倒立の稽古場に持っていけばなんとかなる」というふうにしていきたいなと思っています。
   私は来年以降のことが何にも見えていないんですけど、大学を卒業して、何かを創る機会が減るけど、三転倒立として続けていけば、個人創作としてではなく、みんなで創ることが出来るなと感じていたりします。

   今回の見本市2024でこうなるといいなと思うことがあるとしたら、団体との交流や、劇場やお客さんの皆さんであったり、「私たちと同じことを考えている」人はいるはずで、「今回の見本市2024に出なければ出会えない人」と出会えればいいなと思っています。

人前に出て何かやる楽しさ

――皆さんにとって演劇の原体験、芝居初めについて教えてください。

竹内:もともと4歳の時からバレエをやっていて、その中で踊りじゃなくてマイムというお芝居みたいなシーンがあったんです。
   「これはこういう意味」というのが手話のようにバレエの中で会話していくものがあって、「バレエを踊ることよりも、人とこうやってコミュニケーションを取ることの方が興味があるな」と思いました。授業の音読もすごく好きで、誰かとコミュニケーションを取ることが好きでした。
   「マイムってことは、演技の方に興味があるんだな」というのがうっすらとあって、高校の演劇部に入ったという感じです。

森下:中学3年生の時に観ていた深夜のバラエティー番組『戦国鍋TV~なんとなく歴史が学べる映像~』に舞台俳優さんがよく出ていたもので、そこからリンクして「自分でもやってみたい」と思ったのがきっかけでした。
   更に遡ると、小学生低学年の頃にごっこ遊びをよくしていたのがあり、近所の年下の子とよくやっていました。うちに遊びに来てもらった時に、名探偵コナンの影響を受けて「殺人事件が起きた」というごっこ遊びをしていて、年下の友達は「死体があってどうのこうの」という話を怖いと言っていて、「別にほんとうに人が死んでいないのに何が怖いんだろう」と思って続けていたら親に怒られたというのがありました。
   あとは、記憶に無いのですが、小さいときにおばあちゃんと美容室に行った時に「歌います」と私が言って歌っていた時に、周りのおばちゃんたちにお小遣いをもらっていたらしいということがあって。
    私も授業で音読するのが好きというところがあって、国語の教科書を使って演劇をするという授業があった時に楽しかったというのがあったり、子供の頃にあった人前に出て何かやる楽しさが好きで、舞台に行ったんだなと考えています。

狩野:僕も演劇部でした。
   中学生の頃に色んな人のエッセイをよく読んでいて、気づけば俳優さんのエッセイばかり読んでいて、演技のことも一冊に1個2個くらいは書いていて、「面白いのかな」という思いが芽生えました。
   あとは、中学生の時に選択肢が3つしか無くて、自分がやりたい部活も無く、1年に1回合唱部が無いのに合唱部がイベントに出るということがあり、音楽の先生が出てほしそうにしていたので参加して、音楽の先生と仲良くなりました。それから、合唱の間に演劇があるというイベントを音楽の先生が紹介してくれて、そういうところから興味が出てきました。

ままならないまま、芝居染め

――見本市2024を観に来たお客さんを、何で芝居染めしたいですか?

狩野・森山・竹内:「ままならないまま、芝居染め」にしたいです。

――最後に何かありますか?

狩野:僕たちは三点倒立できません。

※次回は明日、渋谷/もしくは/私/たち/は/何もしらないのインタビュー記事です。次回もまたお会いしましょう!

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