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ジャニーズバッシングに違和感を感じたので、改めて、小林よしのりの「脱正義論」を読んでみた

何だかTVやマスコミ、SNSを賑わせている
「ジャニーズ問題」
被害に遭われた方に対する補償等、事態の早期解決を切に願います。

ただ、以前のnoteにも書いてある通り、
国連の人権理事会が出てきた辺りから、それまで沈黙を貫いてきたマスコミが態度を一変し、一斉にジャニーズバッシングを始め、何となく違和感を感じておりました。

反ジャニーズの世論が形成される中、数少ない擁護派の一人が漫画家の小林よしのり氏ですね。

ジャニーズ問題の日本人のイカレ具合を見ていると、日本人は江戸時代以前の日本の歴史を全く知らないということに気付いた。

(引用:小林よしのりオフィシャルWebサイト)

<ブログの全文はコチラ> 
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日頃の小林氏の見解は、多少なりとも「暴論」の印象を受けますが、確かに江戸時代以前の「男色文化の歴史」を全く知らなかったので、
前回noteに書いたのが、
日本における「男色文化の歴史(1)〜(3)」です。
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⚫︎【ジャニーズ問題②】日本における「男色文化の歴史」(1)
⚫︎【ジャニーズ問題③】日本における「男色文化の歴史」(2)
⚫︎【ジャニーズ問題④】日本における「男色文化の歴史」(3)

こうした歴史的事実の延長線上に、今回の事件があるということも理解できました。

更にnoteの中で、sayu氏の書かれた下記の投稿も拝見して、なるほど、今回の事件に関するモヤモヤの正体に気付きました。
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もしこの記事の内容が本当ならば、今回の「被害者の会」設立の流れは、過去に起こった「薬害エイズ問題」「従軍慰安婦問題」「沖縄基地問題」「反原発運動」などのサヨク系の市民運動に随分と類似しています。

決して、被害を受けた方に対して、悪意を持っている訳ではありませんが、
「被害者の会」の分裂だったり、被害を証言された方が同会に参加していなかったり、個人的には少々、不自然な印象を受けています。

そこで本棚から、今年(2023年)から27年も昔、
平成8年(1996年)に小林よしのり氏が書いた
「脱正義論」を引っ張り出して、改めて読んでみました。


本書に書かれている「薬害エイズ問題」は、
1980年代、血友病患者に投薬された治療薬の輸入非加熱製剤の中に、HIVウィルスが混入しており、日本のHIV感染者の70%以上が、血友病患者だったという問題です。
旧厚生省も、医者も、製薬会社も、その事実を知りながら、ウィルスが混入された非加熱製剤を使い続け、血友病患者・約5,000人の4割、2,000人もの患者が薬害エイズ感染者になってしまいました。

当時の厚生省とマスコミは「ストップ・ザ・エイズ」と称し、「エイズ=同性愛者の性交」が感染源のようだと論じていました。

血友病患者の中に、多くの子供たちや若者が含まれているという驚愕の事実に、義憤に駆られた「よしりん」こと小林よしのり氏は、マンガ家の自分を支えて来てくれた子供たちへの恩義から、原告団の依頼を受け「薬害エイズ訴訟を支える会」の代表に就任します。
「ゴーマニズム宣言(ゴー宣)」を通じて、薬害エイズの実態を暴き、世論の厚い支持を受け、
平成8年(1996年)に、当時の菅直人厚生大臣が、国のミスを認め、原告団に謝罪。
その後、被害者と国、製薬会社との間で和解が成立しました。

この段階で運動は終わるはずでしたが、
この「支える会」は、「更なる社会正義を実現する市民団体」として存続することになります。
つまり、
左翼系の団体に乗っ取られてしまったのです
(または、元々がそういう団体だったのか…)。

国のミスでHIV感染者になってしまった、血友病患者への「友情」や「同情」、「ヒューマニズム」「純粋な正義感」で集まっていた若者達でしたが、
会の運営者達の指導や影響で、いつの間にかメンバー達は「反体制市民運動」に目覚めていきます。

中には『僕は原告(被害者)の皆さんのおかげで、充実している。感謝しています』と、街宣車で本末転倒な演説をする学生まで出て来ます。
被害者のための運動が、自分の正義感を満足させるための場に変わっていったのです。

「個」が確立されていない学生は、「組織」を守る「組織人」として、大人の顔色を伺って行動するようになります。

同時期、オウム真理教との死闘を繰り広げていた小林氏には、「個」を失い「組織」の命令のままに従う、オウム真理教の信者と学生の姿が重なっていたのかもしれません。

オウムや統一教会の手法と同じ様に、カムフラージュして、何も知らない学生を次々に入会させて、左翼の思想を徐々に植え付ける。

いつに間にか、学生達は政治とイデオロギーの渦に巻き込まれていきます。

この事実に危惧感を抱いた小林氏は、ゴー宣での執筆を決意。
運動全体の顛末てんまつを誌上にて公表、
それまでの活動を総括し、学生達を自らの目的達成のために利用しようとする大人達に
「学生を日常へ復帰させよ」を訴えかけます。

しかしながら、小林氏の声は左翼運動家に取り込まれてしまった学生達に届くことはなく、
結果的に、小林氏は「支える会」を追放されます。

善意で始まった運動でしたが、目的が達成された後に起こった互いの意見や方向性の相違は、まるで内ゲバの様にも見受けられます。

「脱正義論」の刊行後も、小林氏は「新・ゴー宣」誌上で自らの考えを展開していきます。

作品として発表する以上、支える会の活動の都合の良い部分だけではなく、その裏側の真実も描く。
それが、表現者として、小林よしのりの作品を読む読者への責任でもある、と小林氏は言います。

その一貫した論旨、歯に絹を着せぬ鋭い物言い、自らの武器である漫画という表現手段を最大限に使った論法、情と気迫を込めた小林氏の訴えは、賛否を含め、多方面で物議を醸し出していきます。

その後、近現代史の検証を始めた小林氏は、
従軍慰安婦問題、歴史教科書問題、戦争論、親米保守派との対立、天皇論、コロナ論など、
過激な論調で様々な作品を発表し続けているのは、ご存じの通りです。


一方、当時の小林氏が危惧した通り、
この市民運動は各方面に飛び火
市民運動は益々活気を帯び、日韓の政治的問題にまで発展した「従軍慰安婦問題」、学生団体SEALDsが大騒ぎした「安倍ヤメロ!」の怒号が飛び交う国会デモ行進など、様々な弱者を救済するための運動が発生しています。

今回も、故ジャニー喜多川氏という一人の個人が犯した性虐待を巡り、国民を巻き込んだ大きな騒動となっています😶

ジャニー氏を擁護する発言は全て、SNSで炎上。
被害者にムチを打つ発言として糾弾され、反論を許さない空気を醸し出しています…😓

世間の擁護派の中でも
「所属タレントは悪くない」
「実はジュリー氏も毒親の犠牲者だった」
という意見は多数ありますが
ジャニー氏本人を擁護しているのは、
小林氏以外、あまり見た事がありません。


本書の後書きで、小林氏は下記の様に記載しています。

わしはバカだから情でやった。
しかし、たとえテロでムショに入っても商売にできると計算してやっていた。
勝てるからやった。
言論を暴力として使った。
そして原告被害者にも学生にも弁護士にも何人かの面白いやつがいて、つきあってて楽しかった。

ただ学生がいまだに自分らが正義だったと信じ込んでいるのは許せん。

原告の大貫さんを早稲田のイベントでシカトしたじゃないか。
組織防衛のために、このわしにやったのと同じようにシカトして謝罪すらしなかったじゃないか。
大貫くんは今年、亡くなった。
心がうずかんか? 
正義だけだったと言えるか?
おまえらは厚生省と同じじゃないか。
組織に個を融解させたおまえらは、個を主張しすぎる大貫くんという原告を、やっかい者として村八分にしたじゃないか!

おまえらが非難している官僚は、おまえら自身の姿だ。
「薬害をなくすために、これからも勉強会をする」だと? 
そんなおまえらが、将来、確実に薬害を起こすんだよ。
自分のやましさにもしっかり目を向けろ。

厚生省を疑い、弁護士を疑い、原告を疑え。
菅直人を疑い、櫻井よし子を疑い、
わしを疑え。
「ええトシこいて被害者にムチ打つようなスキャンダラスな絵を平然と描いて恥じぬ暴力的漫画家」
小林よしのりを特に疑え!

そして自分をきっちり疑え。

信じ込んでいる自分の「正義」から抜け出せ。
今が「脱正義」の時だ!

(小林よしのり「脱正義論」より)

記載したのは、1996年8月1日。今から27年も前。

誰かの意見や上からの指示、マスコミ報道、世論を単純に信じるのではなく、自分自身の頭で考えて行動するよう呼びかけている訳です。

「小林よしのりを特に疑え!」
と小林氏自身が述べていることが真実ですね。

その上で
「学生一人ひとりが社会人として現場のプロになって、プライドの持てるような仕事をしていかないと、世の中は変わらない。
現場の力でしか世の中は変えられないんだ。」
と小林氏は学生達に語ります。

「君たちが本当に社会を変えたいと思うなら、
社会人になってまずこの社会を支えてみなさい。」

本書にある「秘書カナモリの活動日記」を読むと、小林氏が、当時、繰り返される摩擦と興奮、疲労と焦燥の中、この問題にどう向き合ってきたかが、より一層理解できますね。

(新ゴーマニズム宣言・第25章「運動大好きどもは脱正義しろ」より)


運動が勝利して、薬害エイズが「絶対の正義」と社会に認知された後で、のこのこと被害者にすり寄ってきて「共感」している偽善的知識人たち。

今回も同じように、それまで一切報道していなかったのに、ジャニーズ問題が「絶対の正義」と社会に認知された後で、弱者救済と怪気炎を上げる一部マスコミ・ジャーナリスト。

あの時の構図は、変わっていませんね…。

やはり、小林氏の言うように、
「社会問題の解決はプロフェッショナルが現場でやるのが本物だ!」
という意見が、何だか腑に落ちるのです。

今回の性加害問題の件も、知識人、マスコミの意見に惑わされずに、後は、プロフェッショナルの手による解決を静かに見守るのが良いのだと思います。


改めて「正義」とは何か?

「権力 vs 反権力」
「強者 vs 弱者」
「被害者 vs 加害者」
「敵 vs 味方」
の善悪二元論だけではなく、
「正義」を疑ってみるところから始めると、
案外真実が見えてくるのかもしれません。

30年近くも前に刊行された本ですが、改めて読むと「なるほどな」と思わせてくれる一冊です。
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今回も長くなり、恐縮です。
最後までお読みいただきありがとうございました
m(_ _)m

(2023年10月23日投稿)


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