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論文手書きが廃止!?日本最難関士業「司法試験」がCBT化へ

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2023年10月、こんな報道がなされました↓↓

要約すれば、
・これまで論文の記述において手書きだった
2026年の試験より手書きは廃止され、パソコンを使った記述に変わる
ということ。

筆者は、個人的にこの件について特別な思い入れがあり・・・(後述)つい最近このことを知りましたが、今回記事としてピックアップしてみたいと思います。

この話のYouTube動画はこちら↓↓


司法試験とは


▼司法試験に合格するとなれる職業
 裁判官/検察官/弁護士(法曹三者と言ったりします)

▼司法試験を受ける資格
 ①法科大学院(3年間)を修了 または、
 ②司法試験予備試験(※)に合格

合格率はおよそこんな感じ↓↓

日弁連2021年データより)

※司法試験予備試験
法科大学院に通わずとも、法律家になれるように与えられた道。年齢制限はなく誰でも受験可能。合格率は3~4%とかなり低く難しいが、ここを突破すれば本試験合格率は9割を超える。
中には、学部生の間に超難関予備試験に合格、のちの本試験にも合格して資格を得てしまうツワモノもいる。


超絶大量筆記の論述試験


司法試験の目玉(?)は何と言っても超絶大量筆記の論述試験。論述試験は3日間にわたって科目ごとに行われますが、その筆記文字数はなんと約4万字!!

4万字がどれほどのものかと言うと・・・

400字詰め原稿用紙 100枚!
A4用紙 約34ページ!
(1ページ/1200文字換算)
文庫本の3分の1くらい!
(1冊およそ10~12万字として)

この量を3日間で、しかも厳しい時間制限の下で、問題を解きながら手書きで書いていくわけです。そのせいで腱鞘炎なんて話もしばしば耳にしました。

ちなみに、筆者は文系学部の卒論で確か4万字くらいを書いた記憶がありますが、それは数か月をかけて、そしてパソコンで書いていました。


答案文字の出来栄えが試験結果に関わる!?


冒頭に触れましたが、筆者がなぜこの司法試験に思い入れがあるかと言うと、自分が試験に挑戦していたから、ではなく、受験生の文字の指導をしていたことがあるからです。しかも過去に5人ほど(たぶん稀だと思う)も教えていたことがあるのです。

受験生たちは皆、藁にもすがるような思いで、私の元にやってきました。(なぜ私のところにたどり着いたのかはいささか謎ではあります)

・答案の文字が読みづらい(あるいは読めない)のを直したい
・速書きの方法を教えて欲しい
・採点をする試験官の心象を良くするような文字を書きたい

ともすれば、文字の出来栄えが合否に関わるから本当にどうにかしたい、と皆口々に仰るのです。ある受験生によれば「答案は採点者へのラブレター」。

文字の出来栄えがどのくらい合否に関わるかは全く定かではありませんが、彼らにとって論述試験の筆記がどれほどに切実であるかは、初回レッスン時に痛いほどよく分かりました。

しかし筆者は書道家であって、いわゆる美文字は教えられても、速書きのプロでも何でもない!!しかし何とか力になりたい・・・!!


書いた文字が読みづらい/読めない理由


自分で書いたメモが読めない
という人はままいるのではないかと思います。これには大きく2つの要因があります。

・一画一画がつながって(連綿)しまっている
・自己流の省略が甚だしい
 また、ほとんどのケースがその両方

次の点画へつながる際に線が出てしまって読みづらい
線を省略しすぎて何の文字なのかわからなくなってしまう

逆に言えば、「読める字」を目指す場合、この2つの原因を取り除けばほとんど読めるようになります。

一画ずつ離して、省略せずに書く

本当にこれだけでOKです。


最低限読める文字を、最速スピード・最低疲労で書く


筆者は速書きについて大した知識もないことを申し伝えつつ、それでも専門家のお力を借りたいという熱意に応えて、彼らとともに論述試験の対策を練りました。

もちろん、一字一字を基礎から練習している暇などありません。あるなら、法律の勉強をした方が良い。

最低限読める文字を、最速スピード・最低疲労で書く

これが目標です。美文字でなくて良い、前後の文脈類推も含めて読める文字を、答案の最後まで力を持って書き果たす必要があります。

・使用するボールペンの種類、本数
・ボールペンの持ち方(ペン先が紙に当たる角度)
・姿勢
・筆圧
・書いているときの目のやり場
・紙に対する文字の大きさ
・特に読みづらい文字のピックアップ
・ピックアップした文字の改善のための練習方法
・やってしまいがちな癖(文末に文字が小さくなりやすい等)の洗い出し

文字を書く行為は発声のようなもので、かなり身体的に癖づいたものです。それを一朝一夕に直すのは困難なもの。それを前提に、見直せるすべての箇所を見直していきました。ページが変わる際に、ボールペンを変えてちょっとした筋肉のリフレッシュを図る・・とかそんなことまで。

速書きのリアルな辛さやその最中の気持ちも知らねばならないと思い、受験生と一緒に、ストップウォッチで時間を計って30~40分ひたすらに書いたりもしました。(私は問題を解いていないのでその分楽ですが、速書きはまあまあできました)

教えさせていただいた受験生5人のうち、晴れてお二人が超難関の予備試験に合格・・・!!!その後も無事に試験を突破し、今は立派な弁護士としてご活躍されています。


採点者も安堵。速書きの必要性はほぼなくなったのかも


こんなふうに個人的に思い出深い司法試験の論述筆記なのですが、それももうあと2年で終わり。2026年にはいよいよコンピュータを使ったタイピングによる記述方法(CBT)に変わります。

▼CBTとは
「Computer Based Testing(コンピュータ ベースド テスティング)」の略称。
コンピュータを使った試験方式のこと

これにより、受験者の対策も大きく変わることになると思いますが、最も安堵しているのは受験者のみならず、論述試験の採点者。

実際に、筆者の知り合いに採点を担当されている方がいて、「(打ち文字になって)本当に良かった」と仰っていました。(読みづらい字を大量に解読して、運命とも言える合否を決める作業はおそらく難行苦行)

考えてみると、もはや他人に向けた文章をどうしても速書きせねばならない場面というのはほとんどないのかもしれません。

例えば、裁判傍聴では現在でもあらゆる電子機器の使用は禁じられており、手書きメモのみが可能ですが、自分向けのメモであればそんなに気張って書く必要もありません。
また、国会の議事録等は専門の速記者がいましたが、現在では録音、文字起こしなどの技術でいなくなりつつあります。

その他、口頭の授業や商談などでメモを取らねばならない場合、たとえパソコンが使えなくても、スマートフォンで写真撮影や録音、画像により文字を起こすOCR技術等を使うことができます。

手書きで速く読みやすく書かねばならない、という状況はもはやないのかも?しれません。


実用筆記とは離れた書道


もっと言えば、速くなくとも、大量でなくとも、文字を書く機会自体が激減しています。行政への提出文書も多くのものがパソコンで作成して打ち出せるように変わってきました。あるのは署名くらい。

実用筆記はどんどんと機会を失っていく今だからこそ、実用でない書道、なんてのは良いなと思うわけです。(いきなりの飛躍)

そもそも芸術は皆ほとんど実用的な機能の無いものを指すと思います。
合理化が進む世の中でアートバブルなんて言葉も実しやかに囁かれたりしています。これからは、一見無機能なもの、無駄なものへの注目が集まるのかもしれない・・・?という気がしています。

ということで、司法試験の超絶大量筆記は大切な思い出として、実用筆記はデジタルに任せて、無駄に文字を書いてみる、文字と戯れてみる、で良いんじゃないかなと思う派の書道家タケウチでございました。


では!



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