#3 人口308人の町で、地域産品をブランド化し月商1000万を達成した方法
#3 人口308人の町で、地域産品をブランド化し月商1000万を達成した方法
このnoteでは、わずか人口308人の山奥の過疎地で、地域産品を活用したビジネスを展開し、月商1000万を達成した方法や、その裏側についてを詳細に公開します。
#1、#2と公開したところ、さらに反響をいただいております。
嬉しいなと思ったのが、女性向けのデザインスクールを経営してる友人経営者が、コミュニテイーにnoteをシェアして『全員読んで!』と言ってくれたこと。
地方女性が活躍する社会になれば、地域は変わっていくと私は考えています。このnoteが女性の活力にもなってくれたのなら、それは喜ばしいことです。
データドリブンであることや、私の調査量に驚かれた方も多い印象だったのですが、これが自体がマーケティングフローとなります。
新規事業はマーケティングリサーチとセールスプロモーションを常にぐるぐると改善、改良の観点で回し続け、仮説、施策、実行、分析を繰り返すことで、より最適化した事業推進ができるよね、という流れです。
はい、とても大変です。笑
ただ、ただがむしゃらにがんばるのではなく、頑張った分が事業成果として残る、意味ある大変さなので、このマーケティングノウハウが地域に定着した先の未来のためにも、記録しているところです。
本編全体アジェンダはこちら
4.女性に訴求する商品が必須。コアターゲットの狙い
スイーツブランドを誰にターゲットとして展開したか、についてですが、これは絶対的に女性、と決めていました。
理由は2つで
①女性が購買活動においての影響度が高い
②口コミをする、紹介をする、などの購入から連鎖して起こる拡散の2次効果、3次効果の高さを持っている
です。
購買における影響度が高い、そして拡散力を持っている。
この2点について、少し根拠となる情報を整理していこうと思います。
①女性が購買活動においての影響度が高い
まずは、家庭内の購買において、女性の影響力が89.8%を占めている、という調査結果がこちらです。
特に日用品、食品、外食、旅行は女性が高い確率で決定権を持っていることがわかります。
明らかに女性がお財布を握っていて、女性に向けた商品開発、プロモーションが必要不可欠である、ということです。
また女性は「感覚的にモノを買う」という性質があり、非計画的な購買行動を起こします。つまり「衝動買い」を楽しむのが、女性です。
これを女子特有の『感覚マーケティング』と呼びます。
上記資料は、女性が買い物をする際に、どのような動きをするのか、女性が「つい買ってしまう状況」とはどんなものか、をまとめたデータです。
総括すると
「女性がお財布を握っており、それは非計画で衝動的で、購入前に比較検討もあまりしない。
理論的な買い物より、視覚・聴覚・味覚・触覚・嗅覚の五感を使いながら滞在時間を過ごし、その時間が長いほどに購入に至る」
ことが分かります。
実店舗設定としても、思い当たる節がありませんか。
スーパーにホットプレートを出し、ライトを当てながらシズル感たっぷりに試食品を焼いています。いい匂いをさせながら明るいBGMが流れ、販売員が『今日のごはんにどうですか?試食どうぞ!』と一切れ差し出す。
おいしい!じゃあ買って帰ろう、焼くだけで済むし、時短になるし!食べちゃって断るのも悪いかも…!と購入決定です。
ここまでで
・女性が購買の鍵を握っており、サービスをマーケットフィットさせるプロセスの中で、重要視する必要があること
・女性の購買行動を把握し、その行動導線上に、感性を刺激するような情報を滞留時間を伸ばすように揃えると、より確度が高まること
が分かりました。
さらに掘り下げていきましょう。
②女性は口コミをする、紹介をする、などの購入から連鎖して起こる、拡散の2次効果、3次効果の高さを持っている
D2Cの認知向上においても、女性は重要な役割を果たしています。
女性の購買行動をさらに調べると、オンラインでの商品検索や購入、ソーシャルメディアでの商品情報共有、オンラインでのレビュー投稿などを積極的に行う、拡散力の高さが顕著に出ます。
男性は良いものを買ってもSNSに投稿してまで、拡散しようとはしません。自分が満足したら良いのです。
一方女性は共感力が高いため、自分が購入したものを誰かと共有したい、という性質を持つ傾向が高いことが分かっています。
さらに、周りがおすすめしたものにも共感力が高く
▶︎【いいな!買いたい!の共感】
▶︎【買ってみました!情報の拡散】
▶︎【使ってよかった!の共感】
▶︎【周りにもおすすめしたい!の情報の拡散】
▶︎【受け取った女性が同様の行動を起こすエンドレスリピート構造】
▶︎【しかもCSが取れているギフトサービスは、特に共感と拡散が生まれやすい】
という流れになりやすく、女性の共感力・拡散力は、認知やサービスの市場配荷率を上げてくれます。
女性が購買活動において重要な核心であることは、データや統計によって証明されています。
女性の感性が刺激されるサービスであること。
サービスのマーケットフィットを促進する上で、大切な考え方です。
地域企業は、女性向けの戦略的なマーケティングや商品開発を行い、この機会を活用してビジネスを拡大することが求められます。
5.地域産品を安定した付加価値に変える、ブランド化戦略
商品企画開発に関して、D2Cで売れるフローの作り方、コアターゲットの理解を進めてきました。
次に必要なのは「利益創造」。
つまり、付加価値を生み出す、ブランド化戦略です。
ただ付加価値に変えるのではなく、安定して売上が取れる状態で、ブランド化を進める必要がありました。
手段として取ったのは、5つです。
(これまでに描いたプロセスと重複する部分もありますが、このプロットではブランド化に視点を置いて、解説します。)
①マーケットリサーチの実施
②地域産品の発掘
③プライシング
④商品企画開発
⑤ブランディング
ひとつひとつ解説しますね。
①マーケットリサーチの実施
自社のポジショニング(USPの定量化)を進めた際、3C分析を行いました。
note #2の2.【利益の確保】高価格帯のニッチな特定市場を選択する プロットに書いてます。こちらから
競合他社の商品がどんなものか、同様の地方素材を使用したブランドがないか、そのブランドがどのような販売チャネルの選定、プロモーションを行っているか、ざっと調べてみたのです。
これによって、地方の素材の需要や消費者のニーズを把握することができました。
また、競合他社の製品や戦略も分析すると、自社の製品がどのような付加価値を提供し、どの販路におけばヒット打率が上がるかも、見えてきます。
マーケットリサーチの結果、地域素材を活用し、D2CやECで訴求するスイーツブランドのポジションがしっかり空いていることが分かりました。
②地域産品の発掘・選定・活用
USPの方向性が明らかになったので、活用できる地域産品を探しに、実際に市内巡りです。
地域で知られた素材の生産者さんの連絡先を聞き回って調べ、突然すみません、と連絡させていただき
起業の経緯を伝え、スイーツに使いたいので、仕入れさせていただけませんか、とお願いに訪問です。
素材の特徴や魅力を伺いながら、なぜこのおいしさが生まれるのか、言語化していきました。
実際に、平戸島は海と山に囲まれた大自然の場所なので、何を食べても一級品においしいのです。
弊社スイーツは使用する原材料にすべてこだわり、また最小限でレシピを開発するのですが、それはそもそも、平戸島の素材のおいしさを他の素材に邪魔させないためです。
また、素材の希少性や生産者の物語、地域の文化や歴史も含めたストーリーを打ち出すことで、製品の価値を高めることもできます。
商品ページの滞留時間を伸ばす見せ方に気をつけながら、訴求に盛り込みました。
地域産品を安定した付加価値に変えるために必要なのは、
・地域素材の発掘を、足を使って行うこと
・地域素材のストーリーや魅力を調査し、なぜ優れているのかを言語化すること
・地域素材に関連するストーリーや魅力を、リーフレットや商品LPなど、お客様に伝えるフェーズまで落とし込むこと
がテクニカルとしてあるかなと思います。
そしてもうひとつ大切なのは
「生産者に、感謝やリスペクトを持つこと」
もあると思っています。
これは、感情論の話になるようで、ブランド価値を維持する事業戦略の話でもあるのですが
地域素材を生み出すストーリーを伺っていると、細かいとろこまで深く深く、こだわっていらっしゃいます。
この魅力や価値を伝えなければ、という、地域素材を活用してブランド化、売上に転換する意義を持っているか。
これを持っていれば、良い商品を生み出すこと、そして良い商品を届け続けることに向き合う在り方が、自然と生まれる。
パッションによって商品価値が維持され、顧客満足度が取れ、ブランドが守られることになります。
「絶対伝えたいものがあるか」
成功するかしないかで言えば、この想いの強さから派生する「しつこさ」が成功する要因であると最終的には思ってます。
③プライシング
地域産品を安定した付加価値に変えるブランド化戦略。
次に進めるのが、プライシングです。
地域企業は、Aの売上が小さく、利益が大きい市場にまず参入し、この市場でのブランドイメージを確立する必要がある。
この経営・販売戦略については、#1で落とし込まれています。
さらに、ここで大公開するのが、食商品における開発基準ロジックです。
(ここまで出して良いのか、謎。)
まず、ベイン&カンパニー(有名なコンサル会社)が調査した、人がお金を払いたくなる30の価値の結果です。
4つの大分類に分かれます。
さらに分かっているのが、このうちの要素が多ければ多いほど、サービスのファンになる可能性が上がる、ということ。
さらにこの30の価値を、食サービス市場、娯楽サービス市場、アパレル市場、安価市場の4つの中では、何がより高く求められるか、上位5つを調査した結果です。
食サービスは
①商品の品質
②五感へのアピール
③種類の豊富さ
④美的にかっこいい
⑤癒しの感覚
が、お金を払っても欲しい価値である、ということが分かっています。
その他市場に求めるものと比較すると分かりやすいのですが、「食サービスに対して、顧客は必ずしもコスト削減を優先してるとは言えない」
つまり、高くても、5つの求める要素を備えれば、それはお金を払ってでも欲しいものに昇華される、というわけです。
地域企業はこれまでの購買の流れの延長線上で「安くなければ売れないだろう」という先入観を持ってしまいがちです。
そうではなく、顧客がプライシングに対して、納得できる理由を訴求することや、高品質であることに注力することの方が、重要だということです。
なので、自社スイーツは低単価にしなければ、という考えを持って進めたことはなく、本当に良いものを作る方針に徹してきました。
これは、企業の財務状況としても、良い循環を生む取り組みです。
④商品企画開発
上記でプライシング構造、そしてポジショニングやUSPの決定、地域素材の発見、選定ができました。
商品開発の理論としてはNBDモデルを基に、サービスに対する好意度が高い、スイーツを選択しました。
5つのD2C成功の鍵プロットで、LTVが自然に伸びる構造として、ホールケーキやギフトパッケージとして商品開発を進めることも決定しました。
あとは地域素材を使って、本当においしいものを生み出せるか、だけです。
なぜなら、食コンテンツに求められる1番のニーズが「品質」にある、という点についても理解していて、妥協するとここまでの理論が成り立たなくなってしまう可能性が高いですことと
何より、自分の名前で市場に出す以上、自信を持って売り出せるものであることは、心の在り方として私に取っては必要なことでした。
商品開発上で、地域資産をどのように商品開発に取り込んだか、の具体例をひとつ挙げてみます。
平戸島育ちの全粒粉小麦です。
地域を調査してみると、平戸島には国内では希少な小麦畑がありました。小麦自給率は非常に低水準であり、しかも殻付きで製粉された全粒粉小麦は、さらに希少なものです。
この小麦を小麦農家さんから買い取り、福岡の製粉所まで送って粗挽きの全粒粉にします。
この小麦で作るタルトが、冷凍配送しても焼きたてのザクザク感を維持しながら、風味も最高です。
『こんなにおいしいタルトは初めて食べた。』
『冷凍なんて信じられない。』
『タルトを頼むなら絶対 cotoyu!』など、お声をいただくほどの美味しさとなる力を持っています。
さらには、苺や夏香など、平戸育ちのフルーツも豊富で、しかもどれも完熟のものを農家さんのところから、最高品質でピックアップが可能でした。
また、食に求めらえる価値には、五感へのアピールがあること、カスタマイズができること、ビジュアルやパッケージなども重要です。
ギフトにもお使いいただく狙いもあり、「こんな素敵なものを贈ってくれてありがとう」と、購入してくださったお客様の評価を上げるようなブランド体験を、お客様のその先まで作り上げることに意識を向けました。
もちろん品質の中にはパッケージや同梱物のデザインの要素も、顧客の視覚、つまり感性を満たすためにとても大切になってきます。
ギフトシーンに使っていただくものに設定してありますので、お客様が受け取った時、そして箱を開いた時、召し上がった時と、どのシーンに立ってもブランド体験を味わえるように、商品開発を進めました。
商品開発やプライシングの決定、販売チャネルの選定を進めましたし、逆に、ここではブランド価値が下がったように見えてしまうかもしれない、というリスクが生まれるような場所にはおかない、というブランドルールも作り上げながら推進しました。
⑤ブランディング
次に進めたのは、ブランディングです。
確立したブランドイメージを安定的に、一貫性を持って発信し続けること。
製品と地方の素材の魅力を、消費者に伝え続けるPR活動やマーケティング戦略を通じて、製品の独自性や価値を守り続ける必要がありました。
ちょうど今日執筆してる時間も、地域金融の関係者に「マーケティングとは何か」「ブランディングとは何か」、「それによって地域の企業は何を得られ、地域金融としての役割やベネフィットは何か」という勉強会に立たせていただいた後です。
改めて、ブランディングとは何かを明らかにしながら、本noteを進めたいと思います。
ブランディングを総まとめにして、2つに分けるとするなら
「付加価値・利益の創造」
「自社独自想起の獲得」
です。
また、売れる商品開発プロットの中で、マーケティング方程式NBDモデルを紹介しましたが
これもさらに続きがあり、ブランディングの重要性が訴求されています。
NBDモデルにおいて、市場に定着するか、また市場に定着する規模に影響を与えるのが、プレファレンスにある、という結論でした。
ブランディングは、この次です。
市場の好意度を獲得しただけでは、実際に市場で選ばれることはありません。
エポークトセットに入る率、つまり、類似競合の中で、自社が選択肢に入っているか、顧客の脳内想起シェア獲得が必要である、という数式です。
商品開発、商品の市場開拓・定着の後に、顧客の脳内想起にいる状態であり、そこから年間の購入率、購入回数を掛け算することによって、販売予測を立てることができます。
NBDモデルでも設計されている通り、選ばれる、成長する自社サービス構築に、ブランディングは最重要です。
自社サービスの価値を最大値で受け取ってくださるお客様に対して脳内想起を取り、その市場に定着させていく流れをとりました。
これが、地域産品を安定した付加価値に変え、月商1000万円に成長させたブランド化戦略の全体像です。
最後に、少し話が横道に入ってしまうのですが、実は苦言を呈したいことがあります。
一時期国が「地域産業の6次化」を掲げた時期がありました。
今となっては聞かなくなった言葉ですが、地域現場にいる人間として「なんて優しさのない、現場を知らない声だろうか」というのが、当時私が持っていた感情でした。
なぜならば、地域に生きるのは「職人としてのプロ達」です。
職人として生み出すことに人生をかけた人たちに、「マーケティング」「ブランディング」「より利益を上げる商品開発」「WEB活用を含めたプロモーション」などの「商人としてのプロ」領域までやれというのは、あまりにも負荷が大きすぎると
人口減少、少子高齢化の真ん中にいる私が見てる世界と、国が誘導する流れには、大きなギャップを感じました。
そしてそれはうまく流れに乗らなかったようです。
(それはそう。)
私がスイーツブランドを立てたのは、一生スイーツの仕事をするためでは実はありません。
スイーツブランドではなくても、地域から広く売れていき、想いを持ってやれる仕事が他にあれば、私はそちらを選んでいました。
高齢化する地域のみなさんが職人としてのプロなら、私は商人としてのプロになり、地域で生きよう。
そのためには、自身でそのノウハウを体系化する必要がある。
多角的にデータを取った起業当時の私はこう考え、地域資源のブランド化を進めるコンサルティング会社を立ち上げるために、実際にブランドを経営することから始めました。
ここまでの体系化をなぜ進めてきたのかも、つまり今の地点に立つために必要だったから、ということです。
みなさま、ぜひ何度も読み込んで、使っていただければと思います。
※地方企業向けの無料相談受け付けております。
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次回予告
7.唯一無二のブランドにする&応援を生む「ストーリー」設計
8.クオリティと顧客満足の追求
9.地方での効果的なマーケティング戦略
こちらもお楽しみに!
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ではまた明日、お会いしましょう!