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#98『アースワークス』ライアル・ワトソン

 ライアル・ワトソンの3冊目。またしても、世界を見る目を開かれる一冊である。植物が宿している驚くべき心、時代状況が変わっても必ず一定の発生頻度で起こる殺人、あり得ないほどの距離を超えて飼い主の元に辿り着く動物たち、結晶化したグリセリンを真似るかのように自発的に結晶化を始める別の容器の中のグリセリン…
「そんなことがあるのか」と顎が外れる思いを掻き立てる様々な科学の話が収録されている。そのどれが特に面白く、どれが要点かということを述べることは出来ない。どの章、どの頁を開いても必ず何かしらの発見がある。
 科学は確かに世界の謎を一定の範囲で解いている。しかし何の教養的準備もなく、そのおこぼれだけを聞き齧る私たち素人は「世の中そういうもんでしょ」と安易に決めてかかっている所がある。というか、本当に優れた一部の科学者以外は、科学者自身もまた、科学的思考を本当の意味では身に着けていないことが多い。「科学的にそういうもんでしょ」という固定観念が、彼らの世界観を貧しくしていることは大いにある。
 著者はその点どこまでも「子供の目」を持った人なのである。どんなことが起きても否定しない。そして面白いことに、否定しない限り、あらゆる現象は実は肯定されるものらしい。簡単に言えば「あり得ない」という考えをやめれば、「現に起きている」のが事実である。
 未熟な科学者たちが不問に処すような、科学的に「都合の悪い」話を玉手箱のように開陳することで、こんなに面白く不思議な世界に私たちは生きている、ということを伝えてくれる良書。氏の本は手に入る限り読みたいものである。
 
#34『ネオフィリア』ライアル・ワトソン
#37『スーパーネイチャーⅡ』ライアル・ワトソン

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