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水深800メートルのシューベルト|第882話

 気がつくと、ハッチ周辺に固まっていた水兵たちはあらかた艦内に戻り、ゲイルさんは、僕以外の最後の一人が梯子を登る様子を見つめていた。次は僕の番だった。梯子の前で歩哨に立っている彼と目を合わせた。無言で数秒見つめてから口を開いた。
「お騒がせして申し訳ありません」


 ゲイルさんは、心の底にある温かさを厳しさで覆い隠すように、努めて事務的な声で言った。
「早く戻れ。それから許可もないのに真っ先に出ようとするんじゃない。どうせ、もうすぐ上陸できるんだ」

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