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水深800メートルのシューベルト|第916話

「アシェル、背が伸びたね。前はこんなに小さかったのにね」
 彼女は自分の腰ぐらいの所に手のひらを広げて見せた。


「それ六歳くらいの時の話でしょ? それにその時でもそんなに小さくなかったよ」
 わざと口を尖らせてみせた。


「男の子だね。がっしりした体格になった。良かったね、幸せそうで」
「海軍に入ったんだ。これでも、細い方だよ。同期からはビーンスプロウトと呼ばれてうんざりだよ。メリンダも……」
 幸せそうだねと言いかけて口をつぐんだ。


「私は元気よ。思ったよりも悪くない場所だった。もう戻るつもりはないけど」
 メリンダはそう言って、ボールを地面につきはじめた。

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