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水深800メートルのシューベルト|第906話

「気が変わって僕のことを脅迫するつもりかもしれない」
「私、あなたほど彼女の事を知らないけれど。失望したわ。守ってくれた人を疑うの? 万一そうだったとしても、いいじゃない。脅されてきなさい。そもそも、警察にあなたの事を一言も話さなかった人をそんな目で見るの? 会いもしないで。恥ずかしいと思わない?」


 今の生活を大切にしたかっただけなのに、なじられているのが不思議だった。トリーシャはため息をついてから言った。
「私は、アビアナのためにも、あなたが人生を捨てないためにも、一緒に住むことが大切だと思ってきた。でも縛るつもりはないって、いつも言ってきたわよね? 私、メリンダからあなたを借りていたつもりでいたの。だから、彼女が望むなら、あなたは彼女と人生を歩んでいってもいいと思っている。生憎、私はポリアモリーに賛同できないから、みんなで一緒に暮らしましょうなんて言えないけど」

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