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水深800メートルのシューベルト|第880話

「そうか……あいつか。艦内でコンサートを開いた男は」
「演習で良かったぜ」
「軍医は、あいつの頭に何か注射した方がいいのでは?」
 ここかしこで嘲りの声がはっきり聞こえてくると、居たたまれなくなった。


 潜水艦では、私物の持ち込みは制限される。僕は小さい時から安定剤のように寄り添ってくれたピアノを――鍵盤が固く、黄色みがかっていたが――艦内でも持ち込みたかった。音を出さないという注意を受けたうえで、許可されたが、以前電池を外し忘れて、魚雷発射管で休憩中にうっかり音を出してしまった。その時、誰よりも早くすっ飛んで来て、顔を真っ赤にしながら怒鳴りつけてきたのが、ドビー兵曹長だった。

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