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水深800メートルのシューベルト|第962話

顔は上げず視線はようやく外れた蓋の下にある、液漏れした電池の方に向いていた。それを見て思わずため息が出た。そこで、目を上げてアビアナにもう一度謝ると、今度は工具箱を手前に引き寄せ、そのなかにある古い布で電池ボックスにべっとりとついた油のような塊をゴシゴシと擦り始めた。


「アビアナ、パパは出勤の準備なの。お客様にご挨拶は?」
 台所にいたトリーシャが娘の方を振り返って言った。アビアナは不機嫌な様子でいたが、すぐに取り澄ましたようになって、巨人に近づいた。


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