彼はコーヒーに添えていた両手で、今度は僕の肩を掴んで軽く揺すった。
「息子のジョーは私の年老いた母親に預けたんだ。勤務があるし、どうしようもなかった」
昂るような気持が肩から伝わってきた。きっと、前にママが布にくるんで抱いてきた赤ん坊のことだろう。糸のように細い目をしていたということ以外、何も思い出せなかった。
「私ひとりでは息子ひとり育てられない、悪い父親だ。違うか?」
ゲイルさんは、僕の両肩から手を離して、テーブルの上で組み合わせた。静かだが、感情を吐き出すような声のトーン。それは祈っているよう見え、何も口を挟むことができなかった。
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