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ショートショート講座を受講してきました。講座中に作った作品もあります


はじめに

こんにちは。吉村うにうにです。普段、長編小説やエッセイ、たまに詩を書いております。記事はこんな感じで書いております。

田丸雅智先生のショートショート講座に参加してまいりました

5月11日に、恵比寿で開かれた読売カルチャーセンターのショートショート講座を受講しました。時間内に、ショートショート(短くて不思議なお話)を作ろうというコンセプトです。田丸先生の講座はオフラインでの講座は、過去にも何度も受講しており、その度に創作への意欲が高まって帰ることができます。普段、モチベーションが低いわけではないのですが、ちょっと創作に行き詰っている時に受講し、濃密な時間を過ごすと、元気が出てきます。

田丸先生の教えの芯にあるのは「創作を難しく考えず、楽しむこと」ということのようです。これまで色々な先生の講座を受けて、いくつかの創作テクニックを習ってきましたが(使えるようになったとは言っていません)、「楽しむこと」が一番大切な教えだと思っています。楽しんでいれば、勝手に他の勉強もできるでしょうから。

授業の流れとしては、
①先生の自己紹介やショートショートの説明
②不思議な言葉を作ってみる
③書いて(何人かの生徒さんが)発表する。
という流れでした。先生はテーブルを回ってアドバイスを下さいます。アドバイスは「〇〇の良い所は?」という疑問形で、これは構想を深掘りした方が良いですよという意味だと受け取りました。

時間がない中、頑張ってショートショートを作ってみました。

講座全体は90分ですが、アイデアを出して作品を作るまでに我々が使える時間は30分程度でしょうか。いつも先生の講座は時間がなくて焦ります。しかし、この時間のなさが講座のポイントだと思っています。和やかな雰囲気で始まりますが、執筆が始まると、時間がないプレッシャーに追い込まれて物凄く集中します。「楽しんで書いて」と先生に言われていても、「書けないと酷い目に遭う」くらいの気迫で書いてしまいます。
しかし、それがいいのかもしれません。普段、アイデアをダラダラと考えて何か月も新作のアイデアが出ないこともあります。だから時には、こういった自分を追い込む時間がいい刺激になります。
実際、追い込まれると、何とかしようと思い、普段は絶対に書けないような作品が出来上がることがあります。この日も、下書きだけですがショートショートを一篇書き上げることができました。

講座中に作って、家で清書した作品がこちら

     猫の腰椎
                吉村うにうに
「先生、やっぱり狸は駄目です」
 私は、整形外科の外来診察室で不満を漏らした。医者は難しそうな顔をして話を聞いている。
 潰れた腰の一番から五番までの骨の代わりに、安くて評判の良い、狸の骨を培養して作った代用骨を移植する手術を受けたのだ。しかし、この骨には欠点があって、驚くと狸の本性が出て気絶してしまうのだ。その不便さを訴えるべく、手術をした医者の外来へと駆け込んだ。
「商談中に、取引先から値下げを強要された途端に、気を失ったんです」
 医者はしばらく考えた後、口を開いた。
「では、少し値は張りますが、猫の骨を培養した代用骨を使いますか」
 手術は成功したと、医者は胸を張った。

 猫の腰骨は使い勝手が良かった。なんて柔軟性があるのだろう。今度は気を失わないし、腰回りが柔らかくなったので跳躍力が上がり、駅の階段は三段飛ばしで駆け上がれるようになった。風呂に入れば体を180度ひねって腰を見ながら洗える。こんなに猫って便利だったのか。不純物が入っていたのか、喉がゴロゴロとうっかり鳴る癖はついたが、私はすっかり柔軟性を味わえる生活に満足した。

  会社での昼休み、休憩室のソファは同僚に占拠されていた。しかし私は平気だ。小さな椅子ひとつあれば、その上で丸くなって眠れる。何なら練習などしなくても、テレビで見た芸人のように体を丸めて鞄の中に入ることだってできるだろう。たまたま、黒くてあまり大きくない鞄が部屋の隅にあった。そこで、中に入っていた重い梱包材を取り出してロッカーに仕舞い、場所を拝借することにした。鞄の中に入って丸くなりチャックをそっと閉めれば、そこは真っ暗でテントのようになった。その中で自分の足首を枕代わりに頭を乗せると、心が安らいで眠くなり、意識が遠のく。

  誰かに鞄を持ち上げられているようだ。夢うつつでそう感じたが、揺れが気持ち良いのでもう少し眠ることにする。

 どれくらい時間が経ったのだろう。そろそろ昼休みも終わるから外に出ようと思ったが、男がひそひそと話す声が聞こえたので、黙って耳を傾けることにした。
「おい、ブツは持ってきたろうな?」
「ああ、これだ。カネを寄こせ」
 沈黙の後、また揺らされる。
「中身を確認してもいいか?」
「俺が信用できないのか?」
「まあ、いいだろう。おたくとは長いつき合いだしな」
  固い床の上に置かれて、外から鍵のかかる音がした。すると、船の汽笛の音が遠くから聞こえてきた。
                 (了)

猫の体って本当に柔らかいですね、という思いがこもっています。

さいごに

アイデアを振り絞って考え執筆したので、疲れましたが、充実した実感でした。普段、散歩をしながらのんびりと小説のアイデアを練っていますが、時にはこんな短時間で集中力を爆発させるのも悪くないです。講座では、他の受講者さんの発表を聞けるいい機会でした。どうやってそのアイデアを出しているのかを、知ることができます。他の人の頭の中を覗かせてもらって、勉強させてもらえました。先生と、受講者さんに感謝です。

ここまで読んで下さり、ありがとうございました。

 

 

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