「まだ大丈夫だが、早めに出ないと道路が混むな」
彼の言葉にうなずきながら、バッグに荷物を詰め込んだ。とはいっても下着などの着替えや洗面道具はほとんどトリーシャが準備してくれていたので、若干の本とピアノだけで良い。
「ピアノの電池は今から抜いておけ、どうせ弾かないだろう」
彼の言葉に、子ども扱いされた苛立ちが湧いたがそれを抑えつつ、ドライバーの場所を思い出そうとした。
「わかっているよ」
僕はクローゼットの工具箱からドライバーを取り出しながら応え、蓋の弱り切ったネジと格闘を始めた。
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