僕はもうママの方を見るのを止めて、フローズンレモンの溶けた残りを啜った。ママより少し遅れて店を出ようと思ったのだ。ゲイルさんは名残惜しそうに、のろのろと彼女の後ろについて行った。
「ああ、子どもなんて産んだって、いいことなんてないよね」
出入り口の戸が開く時、はっきりとそう聞こえた。
ガラス越しの彼女は、一度も店の中を振り返ることはなかった。
父親代わりになってくれたかもしれない人の心配そうな目だけが僕の視線と二度ほど合った。しかし、すぐに来た時よりもずっと縮こまった背中を見せて、恋人を追いかけていた。
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