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水深800メートルのシューベルト|第996話

 艦長のカールトン大佐は、奥にあるハッチから長い脚を狭いハッチに適応させるようにゆったりと跨いでやって来た。髪を短く刈り込み頭頂部は針のように尖らせていた。細くて精悍な面長の顔に、尖った鼻、細く整えられた眉の下には、やはり細いが理知的でかつ野心的な目がコンソールの計器を覗いていた。


 彼が何かを命じて耀とする前に、大尉が僕の肘に触れた。
「行きますよ。また、後ろが上り坂になりそうだし」


 彼はそう言うと、艦長が入って来たハッチとは反対側から出るそぶりをした。その意味がわからないまま、艦長の方を見つめていると、大尉は立ち止まってそっと囁いた。


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