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水深800メートルのシューベルト|第929話

「いや……、そうだな。どうもね……参ったなあ。普段あまり関わっているとは言えないから、扱いに困っているんだ。自意識が高いというか……プライドなのか……ん。私は良い父親でないのはわかっているのだが」
「あれくらいの年頃の子はそんなものですよ。もっと余裕をもって見てあげないと」


 彼女は笑みを浮かべながらではあるが、きっぱりと意見を口にしていた。ゲイルさんは頭を掻いて
「参ったなあ。俺は父親失格のようだ」
 と言って、息子の方を見た。


「ほら、ジロジロ見ない。多感な時期に入っているんですよ。私もそうだったし、ゲイルさんも覚えがあるんじゃないですか?」
 彼女はクスクス笑いながら、やはり男の子を見て手を振った。ジョーはうつむいて、軽く手を挙げて体面を保っているように見えた。

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