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水深800メートルのシューベルト|第975話

「気をつけてね」トリーシャが息子の安らいだ笑顔を僕に見せてきた。
「それは航海士に言ってくれよ」
 冗談めかして言い、彼女とフェリックスの顔を順に手の甲で撫でた。


 もう一度窓を見た。狂気のような鈍色の空が、上から覆い被さっていた。背中のリュックに手をやる。そこに触れる固い感触が、頭の中によく弾いていた曲のメロディーを浮かび上がらせる。それをイメージで弾くだけで心のざわめきが静かって、勤務に就くエネルギーが湧いてくる。。


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