見出し画像

水深800メートルのシューベルト|第871話

 同い年だが、どうもこの緑の眼と威圧感のある体格の彼は苦手だった。パパを思い出すからかもしれない。彼は笑いながら言った。


「アシェル二等水兵。だからお前は昇進が遅れるんだよ。ここで水に飛び込んで、艦より先に桟橋まで泳ぎ着くような意気を見せなくてどうする?」
 先に一等水兵に昇進した彼は、腕を引っ張ってきた。冗談かと思ったが、案外その力が強くて怖くなってきた。
「お、おい、やめろって。止めて下さい、兵曹長」


 ドビー兵曹長に頼んでみたが、彼は酒でも飲んでいるかのように陽気に笑っているだけだった。後から降りて来たらしい水兵たちからの笑い声が聞こえてきた。

      第870話へ戻る 第872話へつづく
       
          第1話に戻る


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?