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《キンカノート》ナイスタイミングの、ぷぅ。

最初のペットショップ訪問から1ヶ月近くが経っていた。

家から電車とバスを乗り継ぐ50分の経路もこれで3回目。
同じ市内なのにちょうど西と東の真逆に位置するので
行くとなるとなかなかの距離がある。

その日も残念ながら
やや大きめの文鳥たちとの出会いはあれどヒナには出逢えず、
キンカチョウのペアすら居なくなっていた。

うー・・・・。

さすがにもう驚きはしなかったが、落胆はした。
そしてもはや目的を半分見失い、
途中からリスザルやデグーと遊んでいる自分がいた。
いよいよアクアコーナーの入り口で金魚とたわむれていると、

あれ?

コーナー入り口にいくつか積まれたケージがあり、
そこにはなぜか小鳥、ハムスター、ウサギなどが混ざって置かれていた。

アクアリウムコーナーなのになぜ??

と思いながら近づいてみると、
なんと一番上のはしっこに置かれているのは・・・

あのキンカチョウのペアじゃないか!!

誰かに飼われたんじゃなかったの?!
どゆこと? 
小鳥コーナー脱落??
大きくなってきちゃったから目立つ場所に置かれたの?
この混ぜ混ぜコーナーは最後のチャンスなのでは・・・?
一瞬にして頭の中でいろんなことが浮かんだ。

ケージに近づき
「あそこに居なかったからもう飼われたんだと思ってたよー!」
と言うと、
相変わらず止まり木の端っこで並んでいた二羽は顔を見合わせ
トコトコと横歩きしてさらに身体を寄せ合った。

「ホントかわいいなぁ。でもごめんねー、
 私は文鳥を飼ってみたいのよ。しかも一羽!
 ヒナから育てて手乗りにしてベタベタして暮らしたいのよ」

心の中でそう語りかけ、もう一度文鳥を見に行った。

まぁ私が検索するせいもあるんだろうけど
SNSでは飼い主と遊ぶかわいい文鳥の動画がたくさん出てきて
それはそれは魅力的だった。

「文鳥」という知名度の高さも手伝って
ヒナではないが、ベタ慣れ度★★★★のこの子たちにも
きっとすぐに飼い主さんが現れるんだろう・・・

そんなことを考えていたら、
あのキンカチョウたちがたまらなく気になり始めた。

小さいうえにカラーもシック・・・
しかも大人しすぎて
この賑やかな店内ではほぼほぼ存在感の無かったあの子たち。
ここでダメならどんどん違う店舗を回されるんだろうか・・・
それでもダメならどうなるんだろう・・・

「もう・・・なんでまだ居るんだよーぅ・・・」

とぶつぶつ言いながら再びキンカチョウの元に戻り、

「そういう運命ってこと?」
と問いかけてみたが二羽はこちらを見ることもなく、
まっすぐ前を見たまま軽く足踏みをしただけだった。

「うちに来たいから残ってたのかな?」
「うちに・・・来たい?」

「・・・・・・。」


なるほど。
来たいわけではないんだね(笑)

「じゃあ・・・

 行ってみても良いけど〜、って感じ?」 

そう聞くと、

オスの方が初めてこちらを見るように少し背伸びをして、


「ぷぅ。」
と、小さく鳴いた。

タイミングよく返事をしてきた事に笑ってしまった私は、
そのことで一気に決心が着いたような気がして
そのまま売り場のお姉さんを呼びに行ったのだった。















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