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万葉の歌垣の光景に想いを馳せる【2015.02 歌垣山】

万葉の時代、男女が集まって互いに歌を披露し合う、歌垣という行事が開かれた。大阪の能勢地方にある歌垣山は、そうした歌垣の行われた場所の一つで、筑波山とともに日本三大歌垣山と称される。一際寒い晩冬の頃合いに、私は万葉に賑わっていたであろう山を目指した。

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能勢町のバス停から1時間もせずして歌垣山の山頂に着いた。それもそのはず、町から離れすぎたところでは歌垣は行われまい。山頂部は平坦で広場みたいになっていた。地形的条件も広場的で都合が良かったのだろう。

往時の光景というのは、どういう光景だったのだろうか。若い男女が集まり騒いでいたのだろうが、今昔変わることのない青くエネルギッシュな若者の姿があったのだろう。先年の時を越えて、当時の文化の息吹が感じられるのは、変わらずそこにあり続ける山のおかげだ。

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歌垣山を後にし、そこから能勢妙見山まで縦走する。北極星信仰の聖地とされる、あの能勢妙見山だ。朝方の冷え込みのせいか、登山道のあちらこちらから霜柱が生えている。地中の水分が凍りつき、地表に浮き上がってくるというなんとも不思議な現象であるが、通行上、仕方なく踏み砕いて進んでいく。儚くも一朝にして砕け散る霜柱、また元気に咲いておくれ。次咲くときは、誰も通らないような土地の片隅で。

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妙見山を経由し、能勢電鉄の駅まで下山する。妙見山の参拝道でもある登山道を下りると、ここもまた往時の栄えた頃を思い起こさせるような痕跡がみられる。時代とともに人の求めるものは移り変わり、それとともに風景も変わっていく。何が遺り、何が失われていくのか、それは誰にも分からない。

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せめて後世の未来を壊さないような、そんな現代を紡いで生きていけたら・・・。あとは後世が評価してくれれば良い。今日の歌垣山での登山のように。

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