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「女ふたり、暮らしています。」読書感想

ひとり暮らし(+猫2)を始めて8年が経った。
狭い1Kながら、このコンパクトさも部屋の日当たり具合も便利な立地も、ずっと気に入っている。

大通り沿いの角部屋の5階のためとにかく日当たりが良く、そこそこ都会ながら眺望も良い。早朝、大通りを行き交う車の音を聞きながらベランダで読書をしたり、夜中に通りの向こう側のコンビニに出入りする人々や車をぼーっと眺めるのも好きだ。

何より繁華街が隣にあるため、夜も賑やかな気配がする。おばけ方面に怖がりなので、この雑音にとても助けられている。いつだったか、寝入りばなに遠くから万歳三勝が聞こえて来て、こころの中で一緒に唱和した。


そんな中、パートナーと一緒に暮らすためにマンションを購入して、来年の4月に引っ越すことが決まった。

あと1年もせずにひとり暮らしが終わる。始めるまでは、こんなに快適で楽しいものだとは思ってなかった。

実家を出てからは、友達と暮らしたり姉と暮らしたりもした。しかし、この8年でひとり暮らしの快適さを十分に享受してしまったため、再び誰かと暮らすことに若干の不安が出てきてしまった。家族も含め、人と暮らすことの大変さばかりを思い出してしまう。

「ひとり暮らしも、この部屋にいられるのも、あと1年か・・・」

新しいマンションへの引っ越しもわくわくするが、まだ不安と寂しさにザワザワしていた時だった。

図書館で「女ふたり、暮らしています。」という本に出会った。韓国に住む2人の女性、キム・ハナ氏とファン・ソヌ氏の共著で、ふたりと猫4匹がマンションを購入して一緒に暮らすエッセイだった。

まず2人の女性について、どうして2人が一緒に住むことになったのか、実際に暮らしてからのエピソードなどを交互に2人の目線で書いている。そして飼っている4匹の猫についても詳しく書いてくれている。

読み始めたらとても面白くて、手元に置いておきたいとすぐ書店に買いに行った。

好きなもの(お酒や音楽)はほぼ似ているが、性格は全く違う2人。ミニマリストとマキシマリスト、料理を作るのが好きな方と食べるのが好きな方。アウトドア派とインドア派。突発的な方と慎重な方。

翻訳版だが文章や言い回しが面白く、時にグッと来たりニヤニヤしたり、「わかる〜〜」の共感もすごかった。


そして、この本を読んで、誰かと暮らした時の楽しかったことを思い出せるようになった。

友達と、深夜に水曜どうでしょうを見て一緒に泣くほど笑ったこと。キャベツに何をつけたら一番美味しいかひたすら一緒に試したこと。その日あったことを話し続けているおかげでお互いの職場の人物名や人物像、相関図は一度も会ったことがないのに大体把握していたこと。

姉に、熱湯で大火傷をした時に助けられたこと。目が見えなさそうな子猫を道端で見つけて置いて帰ることもできず、連れて帰るとすぐに病院に連れて行ってくれたこと。

そして帰ると誰かがいる安心感、外で何かがあったときに話を聞いてくれる人がいること。

当然、このエッセイでは他人のふたり暮らしの煩わしさやリアルな喧嘩の展開も書かれている。それでも互いを心から尊敬して、この暮らしを楽しんでいる気持ちが、翻訳された日本語でもしっかりと伝わってくる。

読み終えるのがもったいなく、本の最後にある清水知佐子さんの訳者解説もしっかり読んだ。

あまりにも気が合うと思っていたふたりは、一緒に暮らすうちに実は全く正反対の性格であることに気づき、そのことが原因で何度も激しくけんかする。そうして、相手の姿を通して自分を見つめ直し、けんかの技術を磨き、互いに信頼できる存在であり続けるために努力する──友人同士だろうが、夫婦だろうが、仕事仲間だろうが、人が誰かとある程度近い距離で生きていくためには避けて通れない普遍的なテーマが、飾ることなく語られているのも魅力だ。

「女ふたり、暮らしています。」訳者解説

怖がりな自分に言い聞かせる。

喧嘩しても、煩わしく思う日があっても、まっすぐ家に帰りたくない日があっても、たぶん大丈夫。

この本を「大丈夫」のお守りみたいにして、新居に持っていく日が楽しみになった。

ベランダで本読んでるとカーテンの隙間から参加してくる猫

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