「意識を改善するようにしてください」

筆者はビジネスシーンにおいて、まったく好かない言葉がある。それが「意識を改善するようにしてください」だ。

この言葉は、多く「何かミスをした」「十分な成果を生み出せなかった」などの場面で、「正しく遂行せよ」「ノルマに到達せよ」といった意味合いで使われる。また、印象としては上長が部下に対して放っているセリフである印象が強い。
また、亜種として「気をつけるようにしてください」もある。何かに対してより強い配慮を行え、という意味合いだろう。

さて、上長が部下にこれらのセリフを吐いたとする。このとき、きちんと部下の行動は改善へと向かうだろうか? 答えはおそらく「NO」だ。

そもそも、なぜ部下はミスなりノルマ不達なりをしでかしているのかを考えねばならない。ざっと思いつく限り、このような原因が考えられる。

①別のことを考えながらor行いながら仕事をしている
②就業時間中に別のことをしているため、仕事に割いている時間が少ない
(テレワークが普及し、このケースが増えているだろう)
③仕事に対し、部下が高い完成度を追求しようとしていない
④能力が足りない
(本当は話術・交渉力・協働力など、もっと細分化すべきだろう)

これらのいずれかであった場合、上長の「意識を改善」云々の一言で、実際に成果がアップするとは考えにくい。

①のケースならば、その「別のこと」について部下からヒアリングし、それについて考えなくても大丈夫な環境を整備してあげる必要があろう。もちろん「別のこと」はプライベートな内容である可能性もあるため、あまり干渉しすぎるのも考えものであるが。

②のケースならば、監視システムを導入したり、成果に応じた報酬制に切り替えたりすることで解決が図れるだろう。

③のケースは、唯一「意識を改善」云々のセリフが一定の効果を持ちそうなパターンだ。とはいえ、「完成度」の水準を示したり、低完成度のものをきちんと差し戻したりできる制度がなくては、あまり意味がないように思える。また、「意識を改善」云々のセリフだけで本当に成果がアップするような部下であれば、端から完成度が高い仕事をするのではないかとも思う(要検討)。

④のケースならば、その能力を引き上げてやる以外に解決策はないだろう。営業成績が振るわないならば話術や交渉力、仕事を抱え込む癖があるならば協働力やコミュニケーション能力を個々に育てる。あるいは育つ可能性が見えてこないならば、本人の希望を聞きつつ、別部署に異動させても良いだろう。

①から④のいずれのケースであっても、「意識を改善するようにしてください」はほとんど意味がない。かかるセリフは、上長の「ちゃんと注意をした」という実績と快感のためだけにあるものだ、と筆者は思っている。
本当に「改善」させたいならば、数値を含む具体的な方策を提案したり、報酬体系や監視システムなどを改善したりするなど、もっと中身のある発信をすべきではないだろうか。

異論も反論も認めます(突然のですます調)。

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