なぜ日本テレビでVTuber事業を立ち上げたのか

(1)はじめに

日本テレビでVTuber事業を立ち上げて今月でちょうど2年が経ちましたので、そのまとめとしてnoteにいくつか記事を書いてみたいと思います。

簡単な自己紹介をさせて頂きますと、私は日本テレビの社長室でVTuber事業を2018年に立ち上げ、現在は日テレVTuberネットワーク「V-Clan」の共同代表として、VTuberを起用した番組やイベント、YouTubeチャンネルの企画・プロデュースなどを行なっています。

V-Clanロゴ

この2年間は事業責任者としてVTuberの業務に専念してきた私ですが、多くの人に聞かれてきたのは「なぜ日本テレビでVTuber事業を立ち上げたのか?」ということです。

日本テレビと言えば「世界の果てまでイッテQ!」など多くの人気番組を放送しているテレビ局で、入社する多くの人がテレビ番組を作りたいという動機を元に入社しています。私は入社の時からテレビ番組を作りたいという動機ではなく、テレビ局で新しい事業を立ち上げたいと思い、日本テレビに入社しました。正直社内でもそういった人は少ないですし、そういうことがやりたいなら他の会社の方が良いんじゃない?と言われることもありました。

その中でも、なぜ私が日本テレビで新規事業をしているのか、そして多くのテーマがある中でなぜVTuberに賭けてみようと思ったのかを説明できればと思います。

(2)なぜ日本テレビで新規事業を立ち上げたのか?

人気番組を作りたいと思って入社する人がほとんどのテレビ局で、新規事業を立ち上げたいと思った理由は、矛盾するようですが私がテレビっ子だったことが背景としてあります。

私は今26歳になりますが、小さい時からテレビが大好きで、毎日欠かさずテレビを見ていました。年末年始になるとテレビ誌を買ってきてタイムテーブルを確認、録画機をフル活用して一つでも多くの番組を見ようとしていました。中学生になるとさらにエスカレート、ネットで調べて視聴率を毎日チェックし、視聴率の高い番組を自分なりに分析するのがするのが趣味でした。その頃から”テレビ離れ”という言葉はありましたが、中学生の時にはワンセグでテレビを楽しむ時代でしたし、スマホが普及してきた高校生の時も学校の話題の中心はテレビでした。ただそれが大学生に入ると、少しづつ周りからテレビの話題が減ってきて、一人暮らしの友達はそもそも家にテレビがないと言うことも珍しい事ではなくなってきました。小さい頃からテレビが大好きな自分からするとその状態が悔しくて、学生の立場でありながら、なんとかならないかということを考えていました。

そんな自分にとって一つの転機だったのはアメリカへの留学です。2015年からロサンゼルスにあるカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)に約1年間留学していたのですが、そこで見たのはNetflixYouTubeを日常的に見ているアメリカの大学生たちでした。どのアメリカ人の友達の家に行っても、当たり前のようにリモコンでNetflixやYouTubeのボタンを押して見初めていました。あるアメリカ人の友達から、”アメリカの大学生はもう誰もテレビ番組は見ないよ”と言われたのが衝撃的だったのを今でも覚えています。そこで初めてNetflixやYouTubeをちゃんと見始めると、こんなに面白いコンテンツがネットにもあるんだと、その魅力に取り憑かれていきました。

そしてこんな面白いコンテンツがどうやって生まれるのか気になって、知り合いのツテを辿ってNetflixのLAオフィスに行ったこともあるのですが、そこで見たのは視聴データからユーザーに最適なコンテンツを表示するレコメンド機能に多大な投資を行うテクノロジー企業の一面でした。文系の人間である自分からすると、このテクノロジーをエンタメに掛け合わせるという発想そのものが新しくて、エンターテイメントにテクノロジーが掛け合わされるとこんなに新しいモノが生まれるのかと衝撃を受けました。その他にもロサンゼルスではたくさんのエンタメ関係者の方々に会うことができて、大きな刺激を受けたのと同時に、日本との差も痛烈に感じました。

そして日本に帰国すると、その年はNetflixやアマゾンプライムビデオが日本上陸したことから”SVOD元年”とも言われて、「エンタメ界が変わる!」、「さらにテレビ離れが進む!」というニュースがたくさん出ていました。そんな時に就活が始まり色んな選択肢がありましたが、私は変化の時こそ一番チャンスがあると思い、自分のエンタメの原点であるテレビ局で、アメリカで衝撃を受けた”エンターテイメント×テクノロジー”をテーマにした新しいものを作りたい。それは番組ではなく、テレビの枠組みを超えたシステム、つまり新しい事業を生み出したいと思ったのです。

長くなってしまいましたが、これが日本テレビで新規事業を立ち上げたいと思った理由です。

(3)なぜVTuber事業を立ち上げたのか?

新規事業といっても数え切れないほど多くのジャンルがある中でVTuberをテーマとして選んだ理由は、自分の中でのテーマであった”エンターテイメント×テクノロジー”にマッチしていて、またVTuberに無限の可能性を感じたということが答えになります。

このVTuber事業の設計を考え始めた2017年は、VTuberで四天王がYouTubeで凄い勢いで駆け上がっていましたがVTuber全体の数はまだ1000人足らずで、ネット上で生まれたYouTubeの新しいジャンルという程度でした。

私が最初にVTuberに触れたのはキズナアイさんの動画を見た時でしたが、その衝撃は今でも覚えています。バーチャル世界という自分たちとは別の世界で生きているキャラクターとネット上でコミュニケーションができる、、とんでもないものを見つけてしまったという感覚でした。詳細を調べてみると、モーションキャプチャというテクノロジーの進化がその背景にあることが分かりました。調べれば調べるほどこれは一過性のブームではなく、最先端のテクノロジーを使った未来のエンタメであると思い、事業としても高い成長性と将来性を感じました。

だからこそ、その当時はYouTuberの一種というように捉えられていましたが、近い将来YouTubeの枠を超えて様々なメディアで活躍する未来が来るはずだと思い、この分野に日本テレビとしても今から参入するべきだという事業計画を書き上げました。下画像が当時の資料の一部ですが、VTuberがいずれバーチャルタレントとしてリアルなタレントと肩を並べる日が来るバーチャルエンターテイメントというジャンルも一般化されていくといったことを将来ビジョンとして説明していました。

画像1

当時は入社2年目で、そんな若手が事業を立ち上げるということは前例のないことでしたが、様々な人のサポートや協力によって事業化することができました。

(4)VTuberにかける思い

先ほどVTuberのことを”最先端のテクノロジーを使った未来のエンタメ”であると表現しましたが、同時に”人々にとっての新たな生き方や選択肢”であるとも思っています。
生きていると見た目に物凄く囚われていると思うのですが、VTuberを通してこれまで評価されなかった人が評価されたり、その人の夢が叶うような世の中を作りたいです。
だからこそ様々なVTuberが出てきている中で、1人でも多くの才能ある人が世に知ってもらえるきっかけ作りをしたいという思いがあり、そのためのシステムとして日テレVTuberネットワーク「V-Clan」を設立しました。

また事業としても、放送事業とは真逆に近い性質であるからこそ、VTuber事業を通してテレビ局としての新しいビジネスモデルを確立したいと思っています。

今年はV-Clanを立ち上げて、勝負の年だと思っています。一つずつ実績を積み上げながら、VTuberやファンの方々と一緒に大きくしていきたいと思っています。
よろしくお願いいたします!


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