「浅草駒形堂」−餅屋がついているのに・・・?−『江戸名所道戯尽』
最近は研究対象を定めることに精一杯で頭も回らないし、メンタルが弱くなっていましたが、人に話すと少し和らぐのを実感しています。
そんな迷走中の今日こそ広景。今回は『江戸名所道戯尽』の「三十六 浅草駒形堂」です。
◼️ファーストインプレッション
この絵でも星が綺麗に煌めいています。
以前星空特集をしましたが、意外と星の形をしているのは広重以降、広景はしっかり一瞬の煌めきを捉えた描写をしていました。
今回も冬の澄み切った空気のおかげで空には綺麗に星が瞬いている様子がわかりますね。
今回は冬の駒形堂で餅をついているところ。
餅だけでなく左の大きな釜で何かを蒸している様子がわかるので一年の中でも気を緩められるイベントの日なのでしょう。
それにしても餅を突く集団は餅のつき方が下手なのか、ちょっとふざけているのか。
杵担当がこの細い腕で重い杵を反り腰で頑張って持ち上げていますが、ひ弱な感じからしてこの餅つきメンツで杵担当を回してある程度餅になってきたところで周りから「持ち上げてみろ!」とパワハラを受けているような様子。笑
想像以上の持ち上がり方に周りも驚愕の表情笑。
参考書によると、この男性たちは注文のあった家に行って餅をつく「引きずり餅」という職業の人々ではないかと言われています。
この引きずり餅という職業について深ぼってみたいと思います。
◼️浅草駒形堂
以前広重の江戸百で雨の中、空にトンビが飛んでいる絵で駒形堂が描かれていました。
左下のお堂の頂点にある擬宝珠的なものを広景の絵と重ねると同じものが描かれていますね。
これが駒形道でしょう。
こうして重ねてみると、お堂の壁が綺麗な白で塗られてた事実があったことがよくわかりますね。
◼️引きずり餅
デジタル大辞泉にはこのように説明されています。
ということはこの絵の人々がこの大きな杵臼、左の釜を持ち運んでいるということなのですね。
流石に担いでなんて無理難題を解決する法を江戸時代の人々は考えて作りだすことはできたと思うので何かしらの荷台に乗せてきたりするのかな。
https://suumo.jp/journal/2015/12/26/103352/
この資料がどこの文献を参考にしているのかというとおそらく
・「浮世絵で読む、江戸の四季のならわし」赤坂治績/NHK出版新書
・「江戸の暮らしの春夏秋冬」歴史の謎を探る会編/河出書房新社
この2冊あたりではないでしょうか。
上に記されている通り江戸の餅で、外注している場合はそれ専用で裕福な家庭が雇うみたいですね。
今回の絵では駒形堂が注文しているのかな?家が見られないですね。
歌川豊国の『吉例餅つき御祝儀』です。
家の外で餅をついていますが、そうは言っても室内でも餅を作る作業をしているので注文ではないかもしれませんね。
江戸時代の餅つきはこうして大人数で作ることが定番だったのですね。
※
三代歌川豊国の「甲子春黄金若餅」にもありました。
が、虎屋文庫さんが所蔵しているみたいで、許可を得ないと画像使用できないそうなのでこちらにURLだけ貼っておきます。
5枚続きの右2枚ですが、広景の5人ぐみに似た組織ですね。
外で餅米を蒸しているので同じような集団だということがわかりますね。
もしかしたら広景はこの画像を模倣したんじゃないかというものが出てきました。
北斎の『北斎漫画』「十二編」です。
広景はよく北斎漫画の中でも十二編ばかりを引用しますね。
臼を支えている人の腰が弾けている様子や、餅の伸び具合が全く同じですね。
題名の「餅は餅屋」ということから、座っている人は餅屋が作ってくれるのを待っているのでしょうか。
それか、餅屋の真似をして頑張って作ってみたけれど、やはり餅屋のようにうまくいかないということなのでしょうか。
北斎漫画のこの絵だけでも色々想像できますね。
今日は江戸の餅屋についてみていきました。
今日はここまで!
#歌川広景 #江戸名所道戯尽 #浅草駒形堂 #江戸時代 #江戸絵画 #日本絵画 #浮世絵 #引きずり餅 #アート #美術 #芸術
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?