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「青山宮様御門前」−基本3人、1人座り−『江戸名所道戯尽』

観葉植物に水をあげて日光浴させてあげる朝は非常に清々しいですね。

そんな涼しいのは部屋だけな今日も広景。今回は『江戸名所道戯尽』「四十七 青山宮様御門前」です。

◼️ファーストインプレッション

何か鉄の棒を打っている時に出た火花が通行人の太ももに直撃。
そこが赤い斑点になって火傷してしまっています。
こんなに火花が散るなんて、普段からこの鍛冶職人たちは体が火傷だらけなのかもしれませんね。

火傷を負った男性の表情を見てみると、阿鼻叫喚を顔で表したような表情。
3人に対しての怒りの表情とも取れれば、火花に対しての恐怖のようにも見えますね。

鍛冶職人も意外と野晒しで仕事をしているものですね。
どこかの囲いや職場の中ではなく、道でしかも一般人が通るようなところで仕事をしている。

鍛冶職人の仕事現場を浮世絵で見ていきたいと思います。

◼️鍛冶職人×浮世絵

現代は職人たちは職場にこもって、しかもそれぞれの職場で黙々と作業をこなしているイメージ。

しかし江戸時代当時は絵のように道のど真ん中で作業を行うこともあったのかな?

歌川国輝「衣喰住之内家職幼絵解之図」 「第一 鍛冶鉄物」です。
庭先なのか、職場の土面なのか。
鍛冶の作業は3人で行う物なのでしょうか。
後ろの神棚の下には「火之要心」と書かれていて、ここで常に作業をしていることを暗示しているようです。

上の詞書には

「鍛冶鉄物は諸國よりい出るといへとも先京都より廻る◯登りといふ東京にて製造せると地○いふ是は銕をここの品に製○には俵炭といふ極ゆ○かな炭と細々にくだいて○いごといふ火おさいしの具にて火を落し火の中へ幾○も入つつを出しこの○と○いの○にて三人或は四人にてあひ槌にてどんどんとたたく」

とあって、この鍛冶職人たちは鉄を製造するにあたり、俵炭というものを砕いて、、という工程を経て鋳物が出来上がるのですね。
この作業は三人か四人で行うもので、槌を打ってどんどん叩いていくといいます。

鍛冶職人の作業工程や風景を想像することができますね。


鍬形惠斎『職人尽絵詞』です。
ここでも三人で作業をしていますね。
多分俵炭というものは画面右に山積している黒い塊たちのことかな?
座っている人は御座のようなシートを敷いて座りながら作業しています。三つの資料を見比べると、江戸時代の鍛治職人が本当に絵の通りに作業をしていたことに確信が持てますね。


尾形月耕『月耕随筆』「稲荷山 小鍛冶」です。
こちらは幕末の作品で、どこか月岡芳年の名将鑑的な雰囲気を感じますね。
ここでの鍛冶は一人で、火花を散らしながら作業をしています。
左のビッグフェアリーが気になりますが、今回は無視とさせてもらいます。

広景や国輝の描く鍛冶職人よりも威厳があってどこかスマートな印象を受けます。
人間をよりリアルに、でも理想に近い美化を施して描いている時代なのでしょう。


江戸時代の鍛冶職人の作業がどんな風景で行われていたのかを確信できた気がします。

今日はここまで!

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