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「本郷御守殿前」−濡れたくないよりも使命が、、!−『江戸名所道戯尽』

部屋の空気を良くしようと、観葉植物を購入しました。
まずは部屋をきれいにするべく、一年使っていないものを処分に分類して部屋を白を基調にしてみました。

そこに生きている緑があると清々しくなりますね。
放置していたサボテンちゃんも久々に水をやって、虫が来ないようにしながら大きく育てたいと思います。

そんな空気が改まった今日も広景。今回は『江戸名所道戯尽』「四十六 本郷御守殿前」です。

◼️ファーストインプレッション

雨の中でも賑やかな江戸っ子ですね。
肩車というか騎馬を組んで雨の中裸足で戯れています。
その三人組だけでなく、左の男性は藁を編んだものを被っています。
雨を凌いでいるのか、仮装しているのか、、。

今回はこの5人以外に描かれる人間がいないのでどこか殺風景な印象を持ちますね。
後ろの大名屋敷の赤門が目を惹きますが、それ以外にモチーフとなる背景がありませんね。

この人間5人に着目してみると、全員裸足。
雪の日は以前見たようにかなり高さのある下駄を履きますね。
しかし雨の日にもそれは使えないのかという疑問が浮かんできますね。

こんなに空も暗くて雨なのに傘は5人に対して2つ。
人もいないから他の人は逃れて帰路についているのかもしれませんが、この5人はふざけ倒している様子。
高校生なら怪我してます。

真ん中の三人組の上に乗っている人は破顔していて嬉しそう。
それに対して下の二人は上の野郎に向かって不平を言いたいような顔で眉毛をハの字にしている。
傘を3人で使うならこうしよう!と名案が浮かんだ上の野郎は自分だけ得しているのですね。
この3人の仲が以降も続くとは思えない一場面なのでした。

いつもはこのような雨の風景を取り上げる際は雨の描写に注目しますが、今回は雨の中、人々はどのように凌いでいるのかを見ていきたいと思います。

◼️雨の中×浮世絵

今回は雨の中の人間を見ていくということで、俯瞰したものや遠景からの絵ではなくなるべく人物に接近したものを見ていきたと思います。

広重『東都三十六景』「下谷広小路」です。
雨だけでなく風も強いようですね。
それに連動して雨は横殴りのようです。
女性たちの裾が大きく捲れてスネが丸見えです。
後ろの男性は笠を被っていますが、大きなコートのようなものを肩にかけて寒さを凌いでいます。
これは果たして雨風を回避できているのかというと、そうでもない様子。気休め程度でしょう。
前のお偉いさんのお使いのような立ち位置ですが、自分で傘も指すことは許されないのでしょうか。


渓斎英泉『江戸八景』 「吉原の夜雨」です。
江戸時代の日本人は雨に濡れることにそんなに嫌気がなかったのかな?
傘一本、笠一つだけで雨も気にせず自分の仕事に一心です。

フランス人は雨にが降っても小雨なら傘を差さないという話をどこかで聞きましたが、そのマインドに似ている。


雨の時の江戸っ子の対応として、どんなものを持つかということは今まだ調べられていませんが、持っている本の一部にこんな記載が。

牧野健太郎氏『浮世絵の解剖図鑑』より。

「三井越後屋は江戸では後発の呉服屋さん。その分、しっかり新規サービスを考えだしました。そのひとつが「貸し傘サービス」。急な雨に困った江戸っ子は、客でもないのに越後屋の傘を借りに行きました。雨傘には越後屋の大きなマーク入り。雨が降ると越後屋の傘を借りた人が町中を行き交い、歩く広告となってくれたのです。」

当時の広告はポスター的浮世絵だけでなく、実物を使ってそれに移動してもらうという方法を取ったのですね。
斬新だし、始めた当初の利益の即効性はすぐには感じられませんが、のちに利益となって返ってくる商法とは。

その物に利便性やデザイン性を託して、多言無用な広告法は今ではブランドの名前がドンと書かれた洋服を着ている人が歩いている光景に似ているかもしれません。

その服を生かすも殺すも着ている人次第ですけどね。


また、同書をめくっていくと、こんなことも。

「武士は饅頭笠で雨を避けて急いでいます。武士の常の心掛けとして、いつでも刀を抜けるようにと、傘は差さなかったとか」

なるほど、広重の二つ上の作品で傘を差していない男性は武士で、前にいる人に仕えた従順な人間だということなのでしょうか。
このような意味があって傘で片手を埋めないという心掛けなのですね。


雨に対してフランス人マインドというわけではなく、それぞれの職業に応じて装いを変えたり、逆に雨を利用して商売をしようという気概があったのですね。

今日はここまで!


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