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「赤坂の景」−床屋からの落語は美味しい流れ−『江戸名所道戯尽』

善児の拾い子がやっと出てきましたね。Twitterであれだけ予告されていましたが、やっとです。

大河が始まって、一週間の速さを実感しています。
そんな一週間の終わりのような始まりのような今日も広景。今回は『江戸名所道戯尽』「四十五 赤坂の景」です。

◼️ファーストインプレッション

広々とした屋根の下でおそらく散髪?している男性二人組が描かれています。
座っている人の髪が切られているのですが、失敗されたのか不満げに美容師に何か文句を言っています。

美容師は「あああ、、ごめんごめん、、笑」くらいにしか思っていないのでしょう。

横の棚に櫛や大きな鋏が置かれていて、床屋である証拠はたくさんです。
座っている男性が手にしている扇型の板の上に切った髪が置いてありますが、相当切りましたね。
なんだか仲間内で切り合っているいるようにさえ見られます。
右二人の暗い色の半纏を着ている男性たちはそれを見て指を指して笑っています。

後ろに書いてある半紙に書かれているのは一番左に「文楽」というのは読み取れるので落語家?の名前かな?

後ろの白い半紙に書かれていることが何か気になりますね。

江戸時代の店の中は、数日前の「いひ田まち」では店の中身が閑散としていて殺風景な店先と賑わっている大通りの描写でした。店の中が本当に何も描かれていなかったので、今回の店の中のように細部の描写までじっくり見られると、少しワクワクしますね。

今回は江戸時代の床屋についてみていきたいと思います。

◼️式亭三馬『浮世床』

いつも参考にしている日野原さんの本に、このように書かれています。

「式亭三馬の滑稽本『浮世床』の舞台となっているように、江戸時代の髪結床(床屋)は、単に月代を剃ったり髷を結ったりするだけでなく、町の男性たちが集まって無駄話をする寄合のような場所でした。」

式亭三馬『浮世床』に当たる必要がありますね。

〔名詞〕 書名。『柳髪新話浮世床』。滑稽本の一。式亭三馬(さんば)作。歌川国直画。二編四冊。初編文化十年(一八一三)、二編文化十一年刊。『浮世風呂』の後をうけた三馬滑稽本の代表作。髪結床の主人鬢五郎を中心に、『浮世風呂』の銭湯と同じく、江戸庶民の社交場である髪結床を舞台にして、そこに集る種々の人々の語る世事・雑事の話を滑稽に展開して、江戸っ子の生態を描いている。なお、三編を、滝亭鯉丈が渓斎英泉画で文政六年(一八二三)に刊行したが、作柄は前二編に比して数等劣る。

角川古語大辞典の記載です。

『浮世床』は同じく式亭三馬の『浮世風呂』ののち出版された滑稽本で、江戸時代当時の世間話が記録されているような作品です。
『浮世床』は江戸時代の社交場のような役割のあった髪結床を舞台に繰り広げられる「お話」を展開させているということ。

こちらで初めから読むことができます。
やはり歴史的重要文献なだけあって、かなり長編なので一晩で読み切るのも大変かも。
初めからじわじわ読んでいると、床屋に来た男性が、店主が起きていないから起こしているところから始まっているみたい。
そこから来た他の客との掛け合いで話が始まっていくという展開です。

本当に適当に1ページを取ってきたのですが、このように文章のところどころに小さな挿絵があることで前後の文章で何を表しているのかが分かり易いのが読み易いポイント。
やはり江戸調の話し方なのでいくら標準語に訳し易いと言ってもわからネエ言葉が多いですね。

そして節々に床屋ならではの用語も出てきて、主人が仕事をしているという描写もしっかり書かれています。


浮世床の内容についてはこちらの記事にもっと読みやすく書かれています。

人と人の「話と移動」の繋がりで日常的な出来事が形成されていくようですね。

(ちなみに、ちゃんと読んでみようと『浮世床』の単行本をたった今、Amazonで購入したので、今週中に読むことができちゃいます。:)


浮世絵で床屋を描いたものというとなかなか少なくて、上に載せた『浮世床』とは違う出版社の『浮世床』では冒頭のページに挿絵がありましたのでこちらで載せます。

栄文舎版の挿絵です。
こちらでは左のページがまさしく広景の作品と似ていますね。
店先でカットしてもらって、棚も張り紙も配されています。
左ページの二人の間には「侍さん にふはしでくる」?のようなことが書かれています。
侍のようにして、なのか侍さんが客なのか。判然としませんが、会話がありますね。
その下の女性二人組の先頭には「はやくおいでよ」と書かれていて、床屋だけでない会話が描きこまれています。遊女と禿かな?
真ん中の障子には大きく「うきよ」と書かれています。
ここが浮世だと言わんばかりに。

次ページのこちらの挿絵には店の内部から描いた描写があります。
左ページにはまさに髭剃りをしている客が。
セリフには「あぶねへあぶねへ ちげへねへ」と書かれております。
髭を剃っているところで危うく皮膚を切りそうになったのでしょうか。
当時の床屋は何かの資格がないと営業できないとかの規制はなかったのでしょうか。
なかったら継いだ家がずっとやっている世襲制を用いて技術を受け継いでいたのかもしれません。
今私が持っている本をいくつみてもなかなか床屋については記載が見つけられませんでした。

こちらでは散髪の様子というより、後ろの張り紙の多さに注目です。
読み取れる限りでは
・林や正蔵
・三○亭可楽
・朝○○しらく
などなど断片的ですが、落語家の名前がずらっと並んでいることがわかります。
この張り紙はきっと近日の公演の宣伝ポスターだったのでしょう。

話し込んで居座る男性が多かったためか、彼らを自然に公演に促すようにして貼っていたのでしょう。
「今度あれでも一緒に行こうぜ」なんて約束してくれたら効果はてきめんだったことになりますね。


今日は『浮世床』から当時の床屋事情を少しだけ覗くことができました。

今日はここまで!

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