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「深川萬年橋」−亀ちゃん、自分の命を富士に問う…−『名所江戸百景』

今日も新しいバイトの研修です。画面を見つめてばっかりいた後のフランス語は頭がパンパンになりますね。

明日は楽しみな予定が入っているのでそれまで勉強頑張ります!

そんな今日も広重。今回は『名所江戸百景』「深川萬年橋」です。

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◼️ファーストインプレッション

これも『名所江戸百景』の中でも有名な絵の一つではないでしょうか。

亀さんが富士山の方向を見て吊るされています。西の方向を見て何を感じているのでしょうか。

手前の川では船がいくつか運航されていて、しかも荷物を積み込んでいます。これまた江戸の中心に送る消費物資でしょう。

しかしこの絵には題名である「深川萬年橋」が描かれていませんね。灯台下暗し?

北斎の『富嶽三十六景』にも「深川万年橋」はありますが、しっかりとモチーフとして描かれているものです。

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この正面の川が小名木川という川で、奥の隅田川と交差します。

広重の絵で描かれる川は小名木川でしょう。

絵の構成が面白いのも注目です。亀が吊るされている木の枠と右枠の茶色の枠でまるで絵の額縁みたいになっています。奥に映る富士山と亀の大小がはっきりすることで、富士山の遠さと亀にズームアップしていることがよくわかります。


◼️放生会

この亀はまさに放生会に巻き込まれた(?)亀さん。

放生会というものをよく調べてみます。

仏語。供養のために、捕らえた魚や鳥などの生物を池や野に放してやる法会。日本では、天武天皇五年(六七六)に諸国に行なわせたともいうが、養老四年(七二〇)宇佐八幡宮で行なわれたのが初例らしい。後に、陰暦八月一五日に八幡宮の神事として行なわれるに至った。特に石清水八幡宮の行事が名高い。放生大会。

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捕らえた魚や鳥を池や野に話してやる供養法ということ。

上の白黒の絵のように籠に入った鳥をお経を唱えながら野に放し、捕まえた魚を川に放流しているところなのでしょう。

こうすることで良い行いを積んで、現世利益を祈るのでしょう。

しかしここで罠なのが「放したものをもう一度捕まえる」という工程があること。正直生き物の体力を奪ってしょうがない工程だと感じてなりませんが、奈良時代から良しとされてきた行ないなので口は挟みません。

江戸時代は仏事というより、遊び感覚だったそう。笑

この亀ちゃんは一回川に放されたものの、また捕まりこのように吊るされています。この亀は値段をつけられ売られていて、疲れた体のまま自分の行先を想像しているのでしょう。

この亀ちゃんのいる場所がまさに深川万年橋の欄干で、灯台下暗し。橋の上に置かれた桶に吊るされています。桶に入れたままにすると自分の足で逃げてしまう可能性があったためです。この桶の中には水が張られ、鯉や海老、ミニ鰻などが泳がされていたそう。

この亀が”万年”橋であることがとても粋なところ。亀は万年でしたね。それと放生会の殺生に対する意識を重ねて描いたのでしょう。

なんとも放生会には徳を積む要素を感じられないというのが正直な感想ですが、それは江戸時代のやり方に対してかもしれませんね。


この絵では放生会について見ていきました。今回はあまり調べについては少ないですが、深川万年橋については以前北斎の絵で調べたので良しとします。

今日はここまで!

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