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「隅田川両川岸一目の月」−もっと良い歌詠んだから雪降ったのかな?−『銀世界東十二景』

こちらの本を読み終わりました。

お茶の水女子大学の哲学科の教授をされている方が書かれています。
ご年配の教授特有の毒の効いたことをサラッと言うテイストが全面に出ています。

例えば、表紙にあるように「女性をとことん讃美する」と言う男尊女卑のかけらもない言葉をなんの躊躇いもなくおっしゃいますが、そんな「女性」の優しくて平和的で勇敢で繊細な面から判断してのことなのです。

お分かりかもしれませんが、そんな優しくて平和的で勇敢で繊細な面は「男性」よりも”か弱い立場”なのにも関わらずと言う著者の”優しさ”からなのです。

そんな”優しさ”はほとんど全て皮肉です笑。

またこの著者の本を読みたくなりました。

でもこの種の本を読みすぎて、友人などにもこの手の皮肉を口走ってはいけないので程々にします。


そんな皮肉が染みないように気をつけたい今日も広重
今回は『銀世界東十二景』「隅田川両川岸一目の月」です。

国立国会図書館蔵

ファーストインプレッション


この鳥居はこれまで何度も見てきた三囲神社の鳥居ですね。
堤防よりもほんの少しだけ高い位置にある鳥居をくぐると、その先に三囲神社という神社があるのです。
早朝なのか、夜なのか、どちらとも取れる澄み具合です。
非常に空気の澄んだ冷気が漂っていそう。
けれど実際は生活用水も流れる隅田川からなんとも言えない匂いが漂ってはいそうですね。
月が満月ではないところがリアルですね。
下弦の月にすることで日常の中のほんの一瞬が切り取られたような気がします。
なんだか絵葉書みたいですね。

肝心な神社を見よう

今回の絵と同じ構図で、隅田川と鳥居を描きがちなので三囲神社自体を写したものは少ないのですがいくつか紹介します。


国立国会図書館蔵

絵師不詳の「三囲の図」です。
堤防の下にある大きな鳥居の右側に続いている道の先に神社があります。
こちらでは真横から描いているので正面から描いているものを参照しましょう。
少しごちゃごちゃしているしね。


国立国会図書館蔵

『江戸名所図会』第七巻「三囲稲荷社」です。
先ほどの絵師未詳の作品よりも鳥居から神社までの距離が長く感じますね。
やはり『江戸名所図会』の方が写実的で地誌として確立していたのでこちらの方が正しいのでしょう。

右上の詞書には三囲神社の成立の話が書かれています。
全部しっかりとは読めないけれど、元禄年間にここを訪れた老婆が田面に向かって手を叩いたところ、狐を見つけ、、、、。この中には狐が神像を3周したというエピソードは書かれていませんね。

其角の俳句が載っています。
「早稲酒や 狐呼び出す 姥がもと」
という句で、狐と老婆の組み合わせが描写されていますね。


国立国会図書館蔵

本文です。
三囲神社の内陣は英一蝶による書であり、牛若丸と弁慶の半身の図が掲げられているとのことです。

これは初耳でした。


先にも出た宝井其角が発した句にこのようなものがあります。
『江戸名所図会』にも記載があります。
「夕立や 田をみめぐりの 神ならば」
という句は上のスクショにもあるとおり、五元集に載っていて、其角が牛嶋みめぐりの神前にて雨乞いをしていた者に替わって歌った歌です。
すると、次の日には雨が降り始めたといいます。

迷信って平安時代とか古代とか鎌倉時代とかまでなら確かにそんなこともありそうだなって思えますが、江戸時代も18世紀頃にこのような逸話があるのって信じ難い気もします。笑

でも正直、雨が降るのは気候や時期によっては次の日降ることも予測できなくはないというつまらないことを言ってしまいます、、。笑

でもこれで三囲神社に行って、友人に三囲神社の成立から逸話、そして浮世絵での描かれ方について衒学的になることができちゃうので満足です。


テキトーなこと言っているなあ。

今日はここまで!
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