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「袋井 出茶屋ノ図」−左フツフツ右シーーーン−『東海道五十三次』

最近顔が茶色い気がします。やはり冬よりも顔が黒くなるのはよくあることなのでしょうか。
冬でも夏でも秋でも春でも日焼け止めを塗っているけれど焼けるものなのですね。

ビタミン剤飲んでホワイトニング系のサプリ飲んで冬を迎えようと思います。

そんな顔の黒さに悩む今日も広重。今回は『東海道五十三次』の「袋井 出茶屋ノ図」です。

◼️ファーストインプレッション

手前の茶屋で何か物語が始まっていそうな雰囲気すら感じる人間の生き生きとhした様子が特徴的ですね。
一本の木下に店を構えていることで少し名物めいた雰囲気すら感じます。
木の高さに負けないくらい大きな道標や道を挟んでその反対にある高札から分かる通り、ここから袋井の宿場の始まりだったのでしょう。
ここの茶屋では真っ白の顔をした(いいなあ…)おかみさんがここを切り盛りしているのでしょう。彼女が火加減を見て、やかんの湯を沸かしています。
そこに近寄るお尻丸出しの男性も火加減を見ていますね。客なのか旦那なのかわからないところではあります。

木の下に荷物を下ろして屈んでいる旅人はこちらからはあまり姿が見られませんが、多くの荷物を置いて履き物の紐でも解いている様子。
画面左で腰掛けて竈の様子を眺めている男性は笠を携えているので旅人であることが予想できます。
歩き疲れてやっと腰を掛けられて、ほっと一息付いている様子ですね。
何か食べ物を注文しておかみさんが作っている様子を眺めているのでしょうね。

モチーフが画面左に寄っていますが、右にも自然と目がいきますね。
おそらく道が伸びているから、ここから来たんだとかここを通るのかといった想像が膨らむからでしょう。
少し疲れた客の顔が、ここまでの道のりが長かったことを示しているかのようです。

こうして画面右に目を向けると、家が連なっていて人々が農耕をしている様子も見られます。
宿場なのか村なのか、どういう集団なのかが気になるところですね。

今回は袋井の位置と画面構成について見ていきたいと思います。

◼️袋井

前回の掛川は宿場よりも橋の上での人物描写が主だったので今回のように広く宿場を捉えた場合、どこを描いているのか定かにしにくいかも知れませんね。

赤ピンが多くありますが、画面左にある袋井宿東木戸跡というものを基準にして考えると、掛川からはそれなりに平坦な道のりでしょう。
あまり高低差のない道のりで前の宿場からの難関はなさそうですね。

しかしこの距離の歩きは疲れますのでここの茶屋で休んでいきたい気持ちは察します。

画面の左にしかいない人間の様子にこうして目がいくのはこの画面構成に秘密があるらしい。

◼️やかんを中心にして

今回の絵は画面左にモチーフとなる木と人間たちを描き込み、右側は空っぽな様子。
どうしてもアンバランスに感じてしまうような気持ちますが、どこか安心感のある画面構成なのには秘密があるようです。

参考書によると、

「このように、人々の営みはやかんを中心に展開しています。画面の右半分を開放的な空間とすることで、その感は強調されます。右端から続いているなだらかな坂道、木の幹、そして縁台の前面も、やかんを起点としています。「日坂」の夜泣き石と同様、やかんは扇の要の役割を果たし、画面の重しになっているのです。」

『謎解き浮世絵叢書 歌川広重 保栄堂版 東海道五十三次』佐々木守俊

とあります。
やかんを中心に人々が集い、そこに画面の重みがあることで画面中の人々がバラバラとせず、全体のバランスが心地よくなっています。

参考書ではこのやかんの役割を「重り」としています。
確かにここを起点に道が二分していますね。
右には長く簡素な風景、左には茶屋がいくつか並んでいるんだろうなと想像させます。
まるで吉原のあの絵のようですね。

広重『東都名所』「吉原仲之町夜桜」です。
この絵では月が真ん中にありながら、道の折れ曲がりの中心が少し左にずれているのです。
でも、そこにアンバランスさはなく大門に繋がる道に目が引かれます。右の道には桜が咲いていたり、人々は多くいますが、皆が大門に向かって進んでいくのでどうしてもバランスが右にあるように感じるのです。


こうして画面全体のバランスを中心から少し左右にずらす構成を広重は取り扱いましたが、そこにアンバランスさを感じさせないのです。
両作品とも広重の初期の作品ではありますが、すでにこうした画面構成を多用していたのですね。
今日は袋井の位置と、画面構成についてみていきました。

今日はここまで!
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