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#09 ゾウの時間とネズミの時間

(この号は、約3分で読めます)


早いもので、2023年も3ヶ月経過。
ぼんやりしていると、2023年もあっという間に過ぎそうです。

ということで、今回は「時間」について、一緒に考えていきましょう。
 


年齢を重ねると一年があっと言う間に過ぎると、よく言いますよね。

実はこの現象を心理学的に分析し、法則化した哲学者がいます。

60歳の人の1年も、6歳の子供の1年も、絶対時間としては同じ1年。
しかし、その1年。60歳の人には、長い人生の中の1/60。
対して6歳の子供にとって、その1年は人生のなかの1/6。
なので、体感する時間感覚としては、若年層の方が長く感じるという法則です。


この法則、その理論を確立した哲学者の名前にちなんで「ジャネーの法則」と呼び、その体感時間を導き出す方程式(!?)もあるようです。

ツッコミどころ満載の法則ではありますが(笑)、まあ感覚的には誰もが納得しますよね。


この件を書きながら、ふと思い出した本がありました。

「ゾウの時間。ネズミの時間。」(著:本川達雄)

20年以上前の本ですが、ベストセラー本になったので、知っている人も多いと思います。

この本の要旨は、「動物は体重によって、心拍数、寿命、ひいては時間の流れる速さが違う。 そして、一生の間に心臓が打つ総数は、どの哺乳類動物もおおよそ15億回と決まっている。」という内容。

たとえば、ゾウとネズミ。
ゾウの体重はネズミの10万倍。そして、心拍速度はゾウの心拍が1回3秒なのに対し、なんとネズミの鼓動は0.1秒!(人間は約1秒)
この心拍速度が、動物が時間を感じる体感時間にも関係しているようです。
本によると、ネズミはゾウに比べ、50倍時間を早く感じるとのこと。
また、ゾウやネズミに限らず、多くの哺乳類は心拍数15億回で寿命を迎えるみたいです。

ちなみに私たち人類が15億回目の鼓動を打つのは27歳の時。先史時代のヒトの寿命は30歳だったと言われているので、ある意味符合していますよね。


ネズミの時間感覚は不明ですが、ヒトの脈拍数と時間感覚の相関性は、科学的に立証されているようです。

脈拍数が早まる事例は、危険に晒された時。
アドレナリンが分泌され、1.5倍速のような感覚で、俊敏に行動できます。

脈拍速度が落ちる事例は大麻の吸引。
血流が遅くなり(脈拍が減速)、レゲエのようなゆったりしたリズムで時間が流れるようです。

でも、ジャネーの法則やゾウの時間の小難しい理屈より、一番分かりやすいのは、、、

「楽しい時間は、あっという間に過ぎる。一方、面白くない時間は、なかなか過ぎない」。

これですよね?
これこそ、古今東西、老弱男女、万国共通の、時間を感じる法則だと思います。

仕事の時間も、そうですよね?
自分の好きな面白い仕事は没頭し、時間を忘れます。
対して、苦手で嫌いな仕事は...

ここにも、「時間」と賢く付き合うヒントがありそうですね。

さて、当社のメンターであるドラッカー氏は、時間について何と語っているのでしょうか?

「私の観察では、成果をあげる者は仕事からスタートしない。
”時間”からスタートする。

計画からもスタートしない。
”時間が何にとられているか”を明らかにすることからスタートする」

P.ドラッカー 経営者の条件より

そして、あまりにも多くの人が「時間」のあることを当たり前のコトとして粗雑に扱い、「時間」に対して無関心過ぎると、ドラッカー氏は厳しく指摘しています。(耳の痛い話です...)

確かにドラッカー氏の言う通り、「時間」は特異な資源。
簡単に消滅し、蓄積もできません。永久に過ぎ去り、決して戻らない希少資源です。

更に、ドラッカー氏の教えは続きます。

『時間に対する“愛情ある配慮”ほど、成果を挙げている人を際立たせるものはない』(ピーター・ドラッカー)

いやあ、“愛情ある配慮”って、スゴイ表現ですね。


会社の経営資源は、「ヒト」「モノ」「カネ」「時間」だとよく言います。

私自身振り返ると、「ヒト」に対してはもちろん、「モノ」や「カネ」に対してもその希少性や重要性が骨身に沁みついていて、自然と愛情ある配慮を行っているような気がします。
無駄に、あるいは粗雑に扱うことに対しては、無意識に自制心が働いています。
一方、時間に対しては管理も甘く、希少な有限資源という感覚もあるようで無いような...

治療院での「時間管理」はどうでしょうか?

鍼灸整骨院等の治療院における”時間”と”成果”の関係性は、ある意味とてもシンプルです。
「患者様の痛みや悩みを取り除く」という成果が明確な中、先生が患者様に向き合う”時間”が、そのまま成果に直結します。
先生が治療に従事し、忙しければ忙しいほど、成果も正比例的に生まれてきます。

他方、治療に忙殺され過ぎて、新しい学びや事業経営に費やす時間がないような状況ですと、それはそれで将来が不安ですよね...


では、どのようにしたら「時間からスタート」できるのでしょうか?

“愛情ある配慮”を持って有効活用するには、どう時間と向き合ったらよいのでしょうか?

ドラッカー氏は、まず自分がどのように時間を消費(浪費)しているか記録し、自分の時間を明らかにすることから始めなさいと説きます。
なぜなら、大半の人は実際どれくらい何に時間を費やしているか理解していないから...
つぎに、その費やした作業が本当に必要かどうか、取捨選択するよう求めます。
そして、最後の3つめが最も重要なのですが、時間を整理することで自由になる時間をひとまとめにして、その時間は重要な仕事に集中して取り組む働き方に改めること。

つまり、
    ①時間を記録する
⇒②時間の使い方を診断し、整理する
⇒③時間をまとめる。
これを定期的に行うことが、時間と仲良くなれるコツのようです。


最後に、「ああ、なんか時間を無為に過ごしてしまったなあ...」と思ったとき、私が常に思い起こしている大好きな一文で、今回のもしドラ治療院を締めたいと思います。

「あなたが虚しく(むなしく)生きた今日は、昨日死んでいった者が、あれほど生きたいと願った明日。」(「カシコギ」 著:趙昌仁)


~次号の「マネジメントは一般教養(リベラルアーツ)である」を読む~


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