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賃金が先か、物価が先か

春闘の結果が出たらしい。やっと賃金が上がってきた。今回は物価が先に上がって、そのあと賃金が上がった格好だ。

意外なことだが労働市場と物価の関係を正面から分析した実証分析研究というのは少ない。日本労働研究雑誌の労働経済学の動向を記した記事を読むと、Hoshi and Kasyapというのが労働市場とマクロ経済学を正面から分析した論文に該当するらしい。

それによると、1998年を境に労働市場のマクロ的な動向が変わったらしい。1998年以前は賃金が労働市場の需要と供給のバランスに敏感に反応していたのに対し、それ以降は賃金が需給に反応しなくなったのだという。

日銀が過去25年の金融政策を振り返るフォーラムで、90年代後半以降労働組合が雇用維持を優先し賃上げを諦めた世界をノルムと呼んでいたが、まさにこの論文がそれを表している。

論文では日本の労働市場の二重構造についても言及されているそうだ。フルタイムとパートタイムで労働市場が分断されているという論点だ。当然ながら企業は新規雇用をクビを切りやすいパートタイムにシフトさせており、パートタイムの賃金は労働需給により感能的だという。

過去25年の金融政策は実際のところ安倍晋三という特異な政治家によるゴリ押しで決まっており、実証的なエビデンスがないままに実行されてきたことがよくわかる。

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