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CINEMAレポ vol.12 「落下の解剖学」(2023年)

「落下の解剖学」
Anatomie D'une Chute
Anatomy of a Fall
(2023年/フランス)

 今年のアカデミー賞で脚本賞を受賞した今作。アカデミー賞授賞式で流れた予告と、主演のザンドラ・ヒュラーが画面に抜かれるたびに横に映るスワン・アルローの魅力につられて(笑)授賞式翌日に鑑賞しに行きました。

 予告編の方がドラマチックに作られているので、ドラマチックさを求めていくとストーリーの運びがかなりあっさりして感じられるかも!淡々とした雰囲気、生々しい描写はまるでドキュメンタリーのよう。
 2時間半の長尺だったけど、淡々とした法廷劇の中にヒューマンドラマとしてのハラハラ、ヒリヒリ感があって、個人的にはあっという間に時間が過ぎました!

 夫殺人の容疑者となったサンドラはもちろん罪を否認するんですが、味方であるはずの弁護士のヴァンサンと話してるときですら彼女の真意や真実がまったく見えてこない…!
 それに反して、夫婦喧嘩のシーンではあまりにも本音すぎる本音をぶつけるので、嫌でもそっちが本性に見えてくるんですよね。脚本とはわかっていても居た堪れないほどの本音と迫真の演技に、わたしは夫目線で見てしまってちょびっと泣きました。笑

 善人にも見えたサンドラの印象が、証言や証拠によってどんどん変化していく様にこちらは疑心暗鬼に陥るばかり。それがたまらなく面白かったです。

 アカデミー賞授賞式で主演女優賞をノミネートされたザンドラ・ヒュラーを紹介したミシェル・ヨーが「わたしはまだあなたを疑っていますよ!」と言っていたけど、まさに!
 あれは最高の褒め言葉だったのだな〜と観終わってから思ったのでした。

 ザンドラ・ヒュラーを筆頭に、素晴らしい役者さんばかりだった今作。
 視覚障がいをもち、唯一の証人であることで父と母の気持ちの間で揺れる息子・ダニエルを演じたミロ・アシャド・グラネールくん。
 サンドラに対するヴァンサンの気持ちを明確な言葉が出ない中でも体現していたスワン・アルローに、重要なシーンで瀕死状態(!)を演じ切った犬のメッシくんまで!

 2時間半、サンドラの本性と真相を掴もうと必死に観ていたので(笑)キャラクターそれぞれの機微に触れて、もう一度観たい作品です。

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