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短期記憶と長期記憶の話

 塾に頂くご相談の中に、
 「暗記のやり方を教えて欲しい」
 「うちの子は覚えるのが苦手みたいで……」
というものがあります。私の塾に限らず、効率のいい覚え方や暗記のしかた、つまり知識の増やし方を教えて欲しいというご要望はかなりあるのではないかと思います。

覚えようとすると覚えられない

 これに対して、私は一貫して、「覚えようとしてはいけない」とアドバイスするようにしています。それよりも、意味を理解して納得したり、いわゆる「腑に落ちる」という経験をすることが何より大事だと。また、覚えられないなら、焦らずに何度か触れることだと。一度で覚えられなくても、また見ればいいし、また覚えればいい。何度も触れることで自然に覚えるはずだと。

 私も経験則でお話をしてきたのですが、いろいろ調べてみると、実はこれは裏付けがあるようですね。私は専門家ではないので、興味があったら深く調べてみてくださいね。ここでは単に「勉強術」という程度の理解でお話をします。

短期記憶に入るか長期記憶に入るか

「認知心理学」という学問があるのですが、それによれば、記憶には「短期記憶」と「長期記憶」の二つがあるのだそうです。新しい情報が頭にインプットされると、その情報は最初に「短期記憶」として人間の脳の「海馬」という部分に蓄えられます。

 たとえば友人の電話番号を聞いた場合、この情報はとりあえず「海馬」で記憶します。しかし、「海馬」は一時的に情報を保存するだけで、しかもとても容量が小さいそうです。ゆえに、基本的に「一度だけ見聞きした」という程度の情報は、海馬は忘れようとするのだとか。出会う頻度が少ない情報は、海馬が「生命維持にはさほど重要な情報ではない」と判断し、忘れるのだそうです。 

 ところが、同じ情報が繰り返し入って来ると、「これほど繰り返されるということは、生命維持に関わる大切な情報に違いない」と海馬が判断し、大脳新皮質の「側頭葉(そくとうよう)」へ長期記憶として保存するのだそうです。この長期記憶は膨大な量の情報を保存ことができるのです。

 実際、40年も前に受験勉強で覚えたことを今なお覚えていたりするのは、それらが長期記憶に貯蔵されているからだと言われます。ですから、学習においては、短期記憶で得た知識をいかに上手に長期記憶へ移行させるかがカギであることはお分かり頂けるでしょう。


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