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岩井ワールド

「組み立て式の棚、ふたたび」

こういった物の組み立ては大概父親が任されるのだが、
リビングでしばらく作業をしていると、
やはり僕と同じように、
説明書の文章がわかりづらく部品が見つからないことで、
父親が

「は??なんなんだよこれ!?
部品1つないわ!
どうなってんだよ!は??」

という状態に陥ってしまった。
挙げ句の果てに
「ダメだこれ!
不良品だわ!
捨てだ!
捨て捨て!!」
などと言い、母親を呼んで

「これ部品1つないから捨てといて!
捨て捨て!!」
と、とにかく“捨て”というパワーワードを連呼しながら激怒してしまうのだ。

『僕の人生には事件が起きない』岩井勇気

わかる…!
めっちゃわかる…!!

組み立て式の棚。

岩井さんは、「精神を崩壊」させ「家庭崩壊」を招く、と言っているが、
まったくそのとおりだと思う。

人生で幾度となく訪れる、
組み立て式の棚を組み立てる。

というステージ。

私もやっぱり
「は?!」
となり、

家族の誰かに投げかけて、やっぱり
「は?!」
となる。

精神崩壊→家庭崩壊
はお決まりのパターンだ。

自分の器の小ささ、理解力の無さ、不器用さに絶望し、
挙げ句家族の不仲を生む。

組み立て式の棚は恐ろさよ。

そんなふうになるのは、自分だけかと思っていたら、
岩井さんがこうやって本にしてくれたので、なんだか救われる思いだ。


この本をパラパラーっ見たとき、ラジオで話されていたエピソードとかぶっていたので、正直がっかりした。

「これ知ってるやつばっかだわ。」
と思いながら読んでみたけど、結局爆笑することになった。

話の流れもオチもわかっているのに、
爆笑させる文章力。

さぞかし文章を書いてきたのだろう、と思ったら
「ネタ以外の文章は書いたことがない。」
と言う岩井さんは、やっぱり天才なんだと思った。

ほかにも
「野良ルンバ」
「“怖い”という感情がわからない悲しき怪物」
「忘れる、という能力者」
など、岩井ワードにハートを鷲づかみされる。

岩井ワールドへの導き方も秀逸。

普通の入口に見せておきながら、
いつの間にかどっぷりと岩井ワールドに入り込んでしまっている。

そんな感じの本だ。
岩井ワールドめっちゃ楽しい。

それにしても、岩井さんの棚は、そろそろ完成したのだろうか。

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