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日本一自殺率が低い地域にみた「無執着」の考え方

無執着とは仏教の考え方で【空の思想】と呼ばれる

仏教思想において最も重要な教えの一つである【空の思想】。
七高僧の一人、インドのお坊さん【龍樹】さんが説いた。わたしなりの理解の仕方としては下記の説明になる。

空=Aでもなく、non-Aでもない

筑紫女学園大学

例えば、目の前に農作物があったとする。それはなにか?と考える。野菜かもしれないし、果物かもしれない。この時点で「カテゴリ」にこだわって考えている。それは執着なんだそう。
「空」という考えは、徹底的に両極端を離れることを求められている。それが「中道」つまり「無執着」になれと。
※中道:極端な行動や思考を避け、均衡と調和を保つ生き方

ふむ…無執着ってどういう状態なんだろうか。似ている言葉から考えてみた。

「無執着」とは?他の言葉と比較してみた

  1. 無頓着(むとんちゃく)
    全く気にかけないで平気なこと。

  2. 無関心(むかんしん)
    その事に関心・興味が乏しく、気にもかけないこと。

上記2つは、全く執着がない状態ではあるんだけれども、同時にそもそも興味・関心がないという意味。それだと無執着とは、似てるようで全く状況が異なる。
無執着を理解する上で、上記の文言との違いは
「関心はもっているが、執着はしない」
こういうことなのでは、と思っている。

子育でのシーンに当てはめて考えてみた。

子育てシーンにおける「無執着」

ポジショニングマップに落としてイメージしやすくしてみた。
縦軸:干渉
横軸:関心
ここで登場するのが「干渉」という言葉。こどもは大人の手が必要なシーンがあるため、干渉の多少をマップに入れた。

マップを見る限り、全く干渉しないし関心がない究極の場所に位置しているのは【ネグレクト】の特徴だ。逆サイドの究極の位置には干渉する+関心がある【過保護・過干渉】の特徴があてはまる。
どちらも現代の子育てシーンで問題になっている毒親タイプである。

一方で、このマップの中でいうと中心から右下のゾーン。ここは関心は多めで干渉は少なめ。どういう状況か例えると、親はこどもの話を関心をもって聞く。でも、あーしなさい・こーしなさいとしつこく干渉はしない。…という関係性。子どもの立場で考えると、こういう親だと嬉しい。
このゾーンで子育てをしている人は【無執着】ができているのではないか。勝手に名前つけると、"無執着育児"かな?

日本の中で一番自殺率が低い地域の話

子育てシーンの他に、人間関係では「関心はもつけど、過度な干渉はしない」そういったスタンスが地域・会社の人間関係にも今まで以上にあるといいと思う。
ふと、以前読んだ本の一文を思い出した。

人に関心をもつことと、監視することは違う

行き心地の良い町

日本の中で一番自殺率が低い地域は、徳島県の海陽町という町。上記はその町を4年間研究した岡檀(おか・まゆみ)さんの本の一文。
生きづらい世の中で、自殺率の低さが日本トップのこの町に、わたしは興味津々。

関心をもたれることは心地よくて、監視になるととたんに不快になる。徹底して監視されると精神が削られてしまう。おそらく、ほとんどの人がそう感じるのではないだろうか。「あなたのためにやっているのよ」という人ほど、自分が行っている監視のせいで、相手に不快な思いをさせてていることを理解していないケースをよく耳にする。

この町の人たちはこの違いに深い理解があるんじゃないか。わたしは現地に行ったことないけれど「ここに居ていい」と思うような居心地が良い空気感があるのではと思いを馳せた。
日本の中で自殺率が一番低い地域ってデータがあるのだから、あながち的外れな印象でもなさそうだ。

海陽町で「Aでもなければnon-Aでもない」を見つけた

この本の中で、興味深いアンケート結果が紹介されていた。

海陽町とその両隣に隣接する町を比較した場合、海陽町の住民幸福度は三町の中でもっとも低い。でも「幸せでも不幸せでもない」の回答は最も高い。

生き心地の良い町

てっきり幸福度が三町で一番高いと出ると思った。自殺率が低いのと幸福度が高いのはイコールではないということに驚き。自殺というのは幸せでないから選ぶのであって、海陽町は幸福度が高いから自殺率が低いのだと思いこんでいた。
けれども「幸せでも不幸せでもない」の回答が最も高いとわかると、それはそれで「なるほど〜」と頷いている自分もいた。

当記事冒頭の「Aではなくnon-Aでもない」がここにあったんだと気付いたから。人に対して無執着ができる町が築きあげたのは「幸せではないけれど、不幸せでもない」中道がそこにあった。そのため日本一自殺率が低い町にできたのではと、ひとつの仮説ができあがった。

「幸でも不幸でもない。」
それが「居心地が良い状態」と言えるのかもしれない。


この本もう一回読むと、また新しい発見がありそうだ。見つけたらまたここに書こう。本当におすすめなので、ぜひお手にとっていただきたい。

「生き心地の良い町 この自殺率の低さには理由(わけ)がある」
岡 檀 (著)
https://amzn.to/3VrozJ8

ちなみに、海陽町の方たちが【空の思想】を意識してるかはわからない。わたしが勝手に紐づけて考えたら、かなりしっくりきたって話なのであしからず。

執着との付き合い方を改めるきっかけに。

こだわらない(無執着)生き方こそ生きやすさ。とする仏教の教えではあるが、日常の中でこだわりを肯定的に捉えられるシーンはいくらでもある。
"店主こだわりの一品"とか"間取りにこだわった住宅づくり"とか、モノ・コトづくりでは、こだわりが活きることが多い。わたしも、クオリティーを高める努力にはいつもリスペクトしている。
一応わたしだってクリエイターの端くれだし、こだわりをすべてなくすことは難しいし、それが良いとも思っていない。ブティズムにおいて持ってて良いこだわりってなんだろう?このテーマはこれからも続けて研究・勉強していきたい。

今、ひとつだけ言えるのは「人間関係のこだわりはすべて捨ててしまう方が吉」。わたしは人に対して「関心をもって接し、執着はしないこと」これをスローガンにして、関係を築いていこうと思っている。


次回、女性蔑視と仏教をテーマに書きたい。

これもなにかの縁ですので、ご贔屓にいただけると嬉しく思います。今後の仏女活動に精進いたします。