わたしが統合失調症について書かない理由

ある日、友達を亡くした。

泣いて、泣いて、泣いた。

暇があれば、思い出しては泣いた。

大学生活は、灰色になった。


家でワンワン泣いていると、遠くから子供の泣き声がして、わたしは泣き止んだ。

悲しみを分かってくれたような気分がして、どこかの幼い子供に、泣き止めるようにと、そっと思った。


そんな日々が2年くらい続いた。


で、ある日、2年も経ったので、明るくなろうと思い立ち、わざわざ笑顔をつくるように心がけた。

心が突然のことに、驚いてようが、構わなかった。

その日からだった。わたしのまわりから、心ない言葉がシャワーのように浴びせられるようだったのは。


教室の向こう側から。すれ違う見知らぬ人から。家の周辺から。心の傷つく言葉が、わたしへと浴びせかけられていた。

たしかに、それは、聴こえた。

ボソボソと言っていても、口調や雰囲気で、内容はよく分かるようだった。


『幻聴』

それは、あとから知ったことだった。

今の現実は、この、刃のような言葉の海で、苦しい、ということだった。


そのころは、母と暮らしていた。わたしは、内側に溜め込みやすいので、なにも起きていないふりをしていた。だから、母は気づかなかった。

いつかは、その刃をもった言葉の主も分かってくれると思いながらも、一年以上も続くと、すこし気持ちが参ってきた。

ついに、朝目覚めてから、夜眠るまで、延々と、心傷つく言葉にかこまれた世界になっていた。


警察を呼び、家の影に怖くて騒いでいる人がいます、と伝えた。警察の人は見回ってくれたが、誰もいなかったという。

母へ連絡して、家を離れて、親類の家に逃げ込んだ。ここには、私の味方してれる人に守られている。

わたしは、2日ぶりに、浅く眠ることが出来た。


朝になり目覚めると、親類の家の周りからは、まだ、怖い人に囲まれている言葉が聴こえた。

『怖い。怖い怖い怖い!』

怯えるわたしに、家族と親類は、大丈夫だよ、と、車で、急遽病院に連れていってくれた。

おくすりの処方。

家に帰り、眠りについた。


起きると、いつもの声は小さくなっていた。

わたしは、刃を向けた言葉の主に、心のなかで伝えた。

(ごめんね、君たちにもなにか訳があるのだろうに。)

すると、

(それは、そうだけど。)

と、弱々しく、頷いた様子だった。どうやら、声の主と仲直りが出来たようだった。


声は、日に日に、段々と小さくなり。

いつしか、消えていた。


今では、すっかり、もとの状態に戻っている。声はとくに聞こえない。ふつうの生活って、なんてありがたいのだろう。と思う。


ただ、おくすりでおさえているので、飲み忘れると、たまに、出現する。

気をつけないと。


◇ ◇ ◇

さて、表題の、わたしが統合失調症について書かない理由と、また、公開しない理由ですが。

素人だし。

それで変な目でみられたくないし。

ちなみに、家族や職場には伝えてありますけれども。

だれかれかまわずいうのは、リスクが高い。ような気がするからです。

実際、たまに症状はでますし。

心ない言葉を、病気への知識不足もあり、そんな気もなくても、かけられることもあります。病気と知ってる人からも、知らない人からも。

それで、それは、その人のせいだけにはできなさそうな問題ですし。

せめて、変な思いの種はまかない方が良いかな、と思い、わたしは、統合失調症について、書いておりません。また、知人や仲のよい友にも話していません。

家族や職場など、必要なときのみ、話しています。


ただ、最終的に、『優しさ』が大切と思ったのは、あります。

幻聴と、折り合いをつけることが出来たのも、幻聴の主の相手を思いやったつもりだったから、ですし。

酷い幻聴のときに、人を傷つけなかったのも、あとからですが、よかったと思いますし。

最近は、思いやりのある優しい対応をしてもらうこともあり、心の底からありがたいと、思いますし。

助けてくれた、家族と親類には、本当に感謝しています。

お医者様にも、大変感謝です。


はい、そういうわけで、思いやりを大切にしたいな、とは思うようになりました。

ありがとうございました。




追伸。冒頭に書きました、友達のお墓参りには、行っています。最近は遠くから、手を合わすだけですけれども。

自分の心に無理を強いすぎるのは、気をつけた方が良さそうです。

まわりにも、自身にも、思いやりを大切にしたいです。



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