宇宙黒猫論の嘘(物語)

宇宙黒猫論の嘘

ニャァ~~。

満天の星の夜になれ。黒猫はまだ沈まない三日月様へ尻尾をひと振り。三日月様はストンと町の灯りに沈んでしまった。

ニャァ~~。

満天の星の夜になれ。黒猫はまだ眠らない人間の町へ尻尾をひと振り。町の灯りは瞬く間に消えてしまった。

ニャァ~~。

満天の星の夜になった。黒猫は三角屋根の上で満足そうに大あくびをヒトーツ奏でた。そして満天に流れる天ノ川を見つめて尻尾を揺らした。

『天ノ川銀河というものは黒猫の為にある。何故ならば古来より天ノ川銀河という星々の円盤はグルリグルリと回転しているのはご存知だと思うが……。その星々の円盤に黒猫のヒゲで出来た針を落とす。すると美しい美しい音楽を奏でるのである。この世界の星という星は皆、この美しい音楽から生まれたのである。すなわち、この星の上にいられることも、黒猫のヒゲのお陰ということになる。

この事実は、宇宙の記録にもある。宇宙から降り注ぐ素粒子を集めて並べてみると良い。それらは黒猫の足跡で出来た音符である。この素粒子という足跡を調べることにより、宇宙の歴史、成り立ち、さらには未来や遠くの果ての黒猫恋事情まで、知ることが出来るのである。

もはや、何の疑いもないだろう。黒猫の足跡を解析することで、世界の全てが分かり、宇宙の支配者となることが出来るとは!!

……とはいえ黒猫にも鳴き声がある。それは、揺らぎ、と言い換えても良いであろう。宇宙とは気分屋でありお天気屋であり黒猫屋なのである。しかも厄介なことに、このニャァ~~という揺らぎが無ければ、地球も銀河もはたまた宇宙さえ黒猫さえもが無かったのである。

ニャァ~~。ま、そういうわけで。そろそろ、宇宙黒猫論にも飽きてきた頃だろう。ノビでもしようではないか。……。

諸君。黒猫とは、何であるか。その通り。黒猫とは宇宙である。黒い尻尾のひと振りで世界は決まり。ピンとしたヒゲのお陰で宇宙は踊り。ニャァ~~の鳴き声において宇宙は創造されるのである。ここのところをよくよく理解頂きたい。』

と、黒猫は尻尾をひと振り。と。

『ハッハハッハ! 黒猫君、大変面白い話をありがとう。』

『ハッ! その声は! お星様……』

『おやおや。宇宙黒猫論? とても良かったよ。しかしそんなことよりボクとダンスを踊ろうじゃあないか。黒猫君。』

と、宇宙から流星群が飛んでいった。

『ニャァ~~。』

パッ。

町に灯りがついて、世界が光に満ちた。

三角屋根の上に黒猫の影はもうなかった。


おわり

(1000文字程度)


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