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小麦は体に害か論争を見てきて思ったこと

小麦が諸悪の根源だ!

という論調が流行り出したきっかけはテニス選手のノバク・ジョコビッチの著書「生まれ変わる食事」でしたが、その数年前から医療界ではちょっと尖った系トピックの主流でした。

ジョコビッチ氏が主張したかったのではなく、本を出すのに都合の良い食事をしている著名人で、たまたま白羽の矢が当たったのでしょう。

「小麦は脳に霧を生む!」

3年前まで勤めていた僕のクリニックの院長も、流行る数年前からそんなことを言って熱心に小麦を控えるよう診察で患者さんに指導し、院外でも推進してまわっていました。

日本人の長い腸に合っていないとか、米食が長かった日本人の腸内細菌がうまく分解してくれないからとか、色々な矛先に論理正当性を持って来られて、パン食は激減したかというと…

パン屋さんは増えており、小売単価も上がっている(給食のコメパン率だけ下がった)!

という状況にまあ社会の動向の読めないこと読めないこと…ネガティブ・キャンペーンなどではリードできないことといったら、可笑しさを通り越して感心してしまいます。


さて、小麦は悪か無害か?

数年の動向を見聞きしてきて僕が思うのは、小麦も他の食材同様、摂りすぎはよくないんでしょうね。

パン屋さんが小麦の粉塵を吸い込みすぎてアトピーになる報告が結構出てきているようです。

でもそれは残留農薬の影響のようです。

ある店はそれを避けるために、国産現農薬、コストが倍の小麦を使いアトピー問題は解決しました。

その一件だけで判断することはできませんが、ありそうな話だし、それだと小麦自体の問題ではなかったと言えます。

では小麦自体の問題は?それともそれ以前の問題か?

植物は繁殖する条件は種族で大体同じですし、動物だって行動特性が種族で共通するので、タンパク分子とか組成から、外部から取り入れて蓄積していくものも似通ってきます。

自然のものはどうやっても偏った特性を持つし、捕食者は多様な接種でバランスを保てるのだと思います。

偏食にはリスク回避があるから進化で雑食が増えていくと養老孟司氏も申しております。

日本人だから合ってない、欧米人だから合ってるという論調も流行りましたが、これも次第に混乱した情報になっていきました。

例えば、小麦は小腸壁にべっとりつくから詰まる、というのは物理的特性でのお話です。

対して、今まで何千年も米食だったから日本人の腸内細菌は小麦を分解しにくいんだ、は民族の文化特性によるお話です。

ところがイタリア人はオリーブオイルを大量に使うのは腸内に小麦がべっとり着くのを防ぐからだ、というのを聞いたことがありますが、これは先ほどの物理特性と文化特性が混ざったお話ですね。

いろんなことが言われていくと次第に何もかもごっちゃになってきて、賑やかし情報だらけになってきましてこうなるともう論理的に考えられなくなります。

嫌悪感とか、そういうもので判断してしまう。そこまでいって、行動を変えるかというと一時的なんです。

嫌悪感が解消されるまでパンを食べないだけなんです。気が済んだらまた買って食べる。

僕らってそんなものです。


さて、僕の野生的カンでは海産物であろうと青汁であろうと小麦であろうと偏って食べるのはどれも毒なのでしょう。

魚介にしたってあんな濃い塩分で繁殖していける生態の生き物の細胞ですし組成分子でできているんです。

自分の体のパーツをそこからだけ仕入れてたら、海で生きてない僕らには次第に無理が来ても不思議ではない。

魚介に多いプリン体の摂取過剰で関節に異常が出てきて痛風、と言われますが、関節荷重のない魚介食べ過ぎで起こるなんて、冗談のようで実は道理の行くことにも思えます。

野菜だって筋骨格がないから繊維で体を直立させていくでしょう。それだけ仕入れてても限界があると思います。やはり肉は肉になりやすい。

というわけで、パン麺ばかりだったら米も食べましょう!というごくごく平凡な結論に至るお話でした。



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