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マンションの同級生〜後編〜 |エッセイ



前編↓


頭突き後、普通に1日を過ごし、
帰宅した瞬間、母に今日の事件をチクった。

あいつの親になんとか言ってくれ!!
と頼むと 
「ママだって関わりたくないよ」
と珍しく渋ってきた。

家を買って、引っ越してきた当初は、
彼の母親になぜかとても気に入られて、
お茶に誘われたりしていたそうだ。
ある時、家に変な気配するから見にきて、
と家に招かれた。
家具もほとんどない殺風景の部屋の白い壁の前に
立たされ、
「ここ、ぼんやり音がするでしょ」
と言われた。
どこかの家でピアノの練習をしている音が聞こえていたので
「どこかの家でピアノ弾いてるね」
と言った。
「そうじゃないんだけどな…」
と言われたが一応その場は終わらせた。
その後、毎日家に見にきてと誘われるようになった。
でも霊感もないし、何度見せられても何も分からない。
「本当に私には何も分からないから、プロに相談したらどうですか?力になれなくて申し訳ないけど、本当になんにも聞こえないし、分かりません。」
と言って、行くのをやめた。
すると、FAXを1日何十枚も送ってくるようになり、最終的にはハリーのホグワーツ入学許可証レベルで送られて来るようになったので、
FAXを廃止。
だからうちにはFAXがないんだよ。
とのことだ。

当時、FAXで従兄弟と手紙交換をしていたので、
突然FAXがなくなり、私も不便だった。
怖!という感情より、おしみ家のFAXをよくも奪いやがったな…という怒りが当時の私を支配した。

子供が頭突きされてるんだからしのごの言わずに
凸ってくれ!!
と思っていた私もその話を聞いて、
もはや凸らないでくれ…関わるのをやめよう…
と幼いながらに思うようになったので
尻頭突き事件は泣き寝入りとなった。

そんな因縁の親子。
今はすれ違えば、大人として挨拶はするが、
もちろんあちらは無視。もはや見えてませんという感じだ。(私だけではなく、全人類に対してそう。)
こっちは、「こいつが私の尻に頭突きを…」
「こいつのせいでうちのFAXは…」
という思いを押し殺しながら挨拶してるってのに。

何年か前、近所に和菓子屋が出来た。
饅頭を買えたり、大福が変えたり、
抹茶のプリンが買えたりするので、とてもありがたい店だ。

今でも時々、おやつを買いに行っている。
先日、ちょっとお散歩でも行こうかとその和菓子屋へ向かった。
1個150円の饅頭を2こ、お会計のためレジへ持っていった。
「300円です」と言った店員さんは、いつもと変わらない
“和菓子屋のパートのおばさん”という感じで、
にこやかに笑っていた。

だが、私は顔を見た瞬間、背筋が凍った。
、、、、、あの人だ。
マンション内ですれ違っても、無表情で何も見えてませんスタンスの、あの、、。
小学生の私の尻に頭突きをした同級生の母親。
うちからFAXを奪ったあの女だ!!

あの人が、目の前でニコニコと笑い、
「ありがとうございました〜!またお越しください〜」
と私に向かって言っているではないか。
いつから働いているのだろう…
もはやここでも何も言わず、いつものように無表情でいてくれた方がマシだった。

昔、さはちゃんと満喫で読んだ
「スマイリー」の笑顔がフラッシュバックしながら家へと帰った。

数日後、マンション内ですれ違うと、やはり
いつものガン無視無表情だった。
あの日の出来事は幻だったのだろうか。

いついるか分からないので、
気軽に和菓子屋に行けなくなってしまった。
桜餅、食べたかったのに…。



おしみ
1998年3月生まれ、AB型
甘いものは、しょっぱいものを美味しく食べるために食べます。
極楽に生きたい!

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