新型コロナがきっかけで始まったリモートWEB動画まとめ(2020年4〜5月分)
※ 2020/05/17(追記)
こんにちは。大変な状況が続いていますが、ご無事でお過ごしでしょうか?エンターテインメント業界にも当然、新型コロナウィルスの影響が及んでいます。イベントの中止、延期、番組収録の延期なども報道されているとおりです。本日4月20日も「ONE PIECE」などのアニメーション作品も放送休止が発表されました。
しかしながら、エンターテインメントに携わる方々は少しでも日常を豊かにすることができないか、また、表現を生業とする方々に機会を提供することができないか、という思いで、あの手この手で、作品を生み出し続けています。星野源さんの「うちで踊ろう」はその先駆けでした。
今回の記事では、そういった取り組みの中でも代表的なものをまとめました。共通しているのは「ZOOM」や「Skype」などを活用し、スタジオを開くことなく、リモート撮影・収録を行っていることです。残念ながらこの状況は、収束がまだまだ見えません。そして、キャストやスタッフの安全確保を大前提とした、この撮影体制はまだまだ続くでしょう。
この記事をご覧いただいた方には、
「制約がある=不便」ではなく「制約がある=新しいものを生み出すことができる」
という考え方で、何かのヒントにしていただいて、新しい作品、そして、感動を届けるためのきっかけにしていただけると嬉しい限りです。
■ (4月)でんぱ組.incのMVや根元宗子による演劇が登場
【4/5】劇団テレワーク:第0回公演『ZOOM婚活パーティー』
企画性の高い作品やWEBコンテンツを生み出しているCHOCOLATE Inc.がYouTube上でZOOM収録によるドラマを生配信しました。フェイクドキュメンタリー的な雰囲気で、架空の婚活パーティーの模様を覗き見している感覚になります。あらすじは以下のとおりです。おそらくリモート収録系コンテンツの中では最速に近いのではないでしょうか。生配信は編集が不要なのでその分、世に出せるのが、早いですね。
【4/13】テレビ電話ドラマ「せーの」
脚本家の鈴木おさむさんが手がけたショートドラマです。付き合っている男女ふたりの何気ない日常の掛け合いが進んでいきます。とても自然体。俳優の久保田悠来さんと女優の芋生悠さんが出演されています。鈴木さんは、緊急事態宣言を受けてから思い立って脚本を書かれたそうで、実質、4〜5日で仕上げています。
【4/13】上白石萌音♪あなた《Sound Inn S@HOME》テレワークで名曲カバーをやってみた!
BS-TBSの音楽番組『Sound Inn “S”』も早々に新しい取り組みに挑戦しました。ミュージシャンたちが悶々とした日々を過ごしている中で、こういった取り組みをエンターテインメントを届ける立場の放送局がまとめ役になるのは素晴らしいことです。星野源さんの「うちで踊ろう」の後追いではなく、こちらはマイクやアレンジにこだわり、ひとつの楽曲として完成させています。どちらも良いですよね。
【4/15】でんぱ組.inc 新曲MC「なんと!世界公認 引きこもり!」
このMVもめちゃくちゃ早かったです。概要は以下のとおりなのですが、ファンが参加する過程までがリモートワークだと可視化されて、楽しむことができるのが素晴らしいですね。そして、でんぱ組.incのメンバーがステイ・ホームを呼びかけることの説得力も段違いでした。
【4/17】超、リモートねもしゅー「あの子と旅行行きたくない。」
緊急事態宣言から時間が経つにつれ、リモート撮影ドラマも進化。書き下ろし劇中曲(作曲は、チャ・ランポ・ランタン 小春)がつくようになります。新たな演劇を次々と打ち出している、ねもしゅーこと根本宗子による映像作品です。しっかり40分あります。こちらは、1,000円(税込)で配信販売中。キャストやクリエイターにきちんと対価が支払われる座組みです。根本さんご本人にもこのように語っています。
インタビューの全文や成立までの背景はこちらの記事をご覧ください。
【4/18】「空飛ぶ映画の会 FLYING FILM SOCIETY」
WOWOWもスピーディに参加してきました。映画館に行くことができない映画を愛する人たちのために入江悠監督やマキタスポーツ、そして、斎藤工らがライブ配信で3時間にわたり映画愛を語り尽くしました。全キャストリモート参加で、齊藤さんがブラッド・ピットのお面を被って登場する一幕も。特定のジャンルに特化したZOOM配信は今後増えていくと思われます。
※ 残念ながらアーカイブは残っていませんでした。
■ (5月〜)「カメラを止めるな!」から新作短編が到着
【5/1】「カメラを止めるな!リモート大作戦!」
「カメ止め」の上田監督が新作短編作品を制作し、公開しました。「カメ止め」キャストも揃い踏みとなるこちらの作品では、キャスト自ら試行錯誤しながら撮影。これまでの作品は「ZOOM」の固定画面でノーカット、といったものが多かったのですが、本作では、リモート撮影を逆手に取り、キャスト自らカメラワークをつけることで、マンネリさを克服。音楽をつけたり、「カメ止め」ファンなら思わずニヤッとしてしまうエッセンスもふんだんに盛り込まれていました。
さらに、未公開映像や作中の架空番組をミニシアター支援のリターンとして提供するなど、映像業界へのメッセージも。リモート撮影作品の新たなベンチマークになりそうです。
【5/10】「九秒らぢお」(脚本・演出:加藤拓也 / 出演:広瀬アリス、伊原六花)
広瀬アリスや広瀬すずらが所属する事務所「フォスター/フォスター・プラス」がYouTubeで公開したオリジナル動画です。脚本と演出を手がけたのは、ドラマ「死にたい夜にかぎって」やドラマ「俺のスカート、どこ行った?などの脚本を手掛ける気鋭の演出・脚本家 加藤拓也 です。
女優やモデルによるインスタライブの配信数は増えてきましたが特に構成はなく、自然体の会話となるものが大半でした。一方、こちらは二人のコメディエンヌぶりが伺える動画となっています。クリエイターのマネジメントも行う事務所の強さですね。
■ まとめ:今後乗り越えていくべき課題
この短期間で知恵を絞った作品が次々と世に生み出されてきています。今後、こういった取り組みは加速していくと思いますが、以下のような課題が出てくるはずです。
撮影環境
ふたつの点で難しいです。ひとつが機材の問題。音響機器やカメラ、特に照明などをキャストが自らセッティングする必要があるため、どうしても画角などの設定が難しいです。ふたつめが演出です。現場で監督が見ているのであれば、演技指導や役者陣とのコミュニケーションができるのですが、遠隔だと細かなニュアンスが伝わりきらない可能性があります。こればかりは、リモートでできるコミュニケーション手法、クオリティチェック手法を確立する他なさそうです。序盤はどうしてもiPadなどでLINEやカンペを出していくしか無いでしょう。
キャストのヘア・メイク・衣装はどうするのか?
作品を撮る上で美術、衣装、メイクが果たす役割は想像以上に大きいものです。背景やZOOMで変えることができたとしても、やはり衣装メイクまで役者の方々が自前でやりきるには限界があります。リモートでメイクを指示するのか、衣装はオンラインで試着などするのか、など課題が残っています。
シチュエーションのマンネリ化
撮影場所がキャストの自宅などになると、どうしても描けるシチュエーションが限られます。「自宅」「マンションの一室」「オフィス」などがギリギリで外ロケや「法廷」「病院」といったシーンは厳しいですから、似たような内容(=人間ドラマ)にどうしても向かわざるを得ません。米CBSでは法廷ドラマをリモート収録する試みが行われています。5月4日に放送予定とのことで、どうやってこの苦境を乗り越えるのか、注目を集めています。
「動画コンテンツは無料」=正しいのか?
一番の課題はマネタイズです。
これまで公開してきた作品は全て無料公開されています。当然、企業が手がけているものについては、プロモーション費用や調査研究費を活用していると思いますが、それも無尽蔵にあるわけではなく、事業や収益に結びつかないとどんどんジリ貧になっていきます。
ただ、そうするとキャストやスタッフ、クリエイター陣に適切な対価が行き渡らないため、苦しいでしょう。
今はまだ「表現の場」として、良いかもしれませんが、キャストやスタッフ、クリエイターの方々が安心して生活できるためにマネタイズの方法を考えるのが、我々媒体側であり、プロデューサーが為すべきことだと思います。
YouTubeの広告費用も減少傾向にあるため、新しい課金システム、媒体を見出し、投げ銭やアーカイブ購入ができるようにしていく必要があります。
もともと、ECとの相性は良いですから、こうした取り組みの注目度が上がり、再生数が伸びることで、協賛や提供をつけられるようになるとまた潮目が変わります。「YouTube広告にいきなり出すのはちょっと・・・」「ブランドコントロールの観点からインフルエンサーやYouTuberと組むのは少し勇気が・・・」というスタイルの会社も少なくないでしょう。
そして何より「リモート撮影だからこのクオリティしか出せないや」ではなく「リモート撮影だからこそできる作品」というのがひとつのキーワードになるでしょう。これを生み出すのが、めちゃくちゃ難しいんだ・・・。
新しいスタイルの企画が増えて、少しでも日常が豊かになり、エンターテインメントが再び輝きを取り戻す日に向けて、我々ができることから始めていきましょう。新しい企画・作品が生まれたら、こちらの記事も随時、更新していきます!
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