あの時に感じた違和感は、新しい自分への応援だった

駅前の地元の人で賑わう商店街。もうすぐ3月が来ようというのに、日の光が弱まると肌寒くなる17時。カツカツとハイヒールの音が鳴り響く。顔を上げると、スーツをビシッと着こなした女性と目があった。

スーツにハイヒール、なんだか懐かしいな。一瞬にしてあの頃の私にタイムスリップした。

◇ ◇ ◇

営業をしていた頃、ハイヒールに違和感があった。スーツは戦闘服だと思っていて、人並みに百貨店で良いものを買ったし、ここぞという時にはその時買ったスーツを着た。期初や決算月、大切なプレゼンがある日は、気合を入れるために身に纏う。私にとって勝負スーツが存在した。

勝負服はあったけど、私には勝負靴がなかった。足のサイズが小さいというのもあり、どうしても良い靴が見つからない。あと、すぐにボロボロになってしまう。スーツ以上に靴は消耗品だ。すぐに買い換えるので、ハイヒールにお金をかけることは一切なかった。

それ以上に、気持ちの問題だった。どうしてもハイヒールを履く自分に違和感を感じて仕方ない。ハイヒールでカツカツと歩いている私を、別の所から違う私が見ている。そんな錯覚にいつも陥った。この違和感は、営業を辞めるその日まで拭い去らなかった。

それと同時に、休日にアウトドアサンダルを履けば、何故か落ち着く自分がいた。本来の自分が戻ってきた、そんな感覚になった。

営業職は私には向いていなかったけど、一生懸命に仕事をしたことに後悔はない。ただ、あのまま続けていたら、私は潰れていたかもしれない。人には適正があるから、合っていない場所にずっといるのはやっぱり疲れてしまう。

もしかしたらハイヒールを履く違和感は、自分を適切な方向へ導いてくれたのかもしれない。
「これを使わなくてもよい仕事があるんだよ」そう教えてくれたのかもしれない。

ハイヒールは履きこなす女性はかっこいいし憧れる。この気持ちはずっと変わらない。私は縁がなかったハイヒール。あの時の違和感は、次への生き方・新たな自分へ背中を押してくれたんだと、そう思う。

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