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アニメ『平家物語』の好きなところ:語彙力が後退するほど良かった

良い作品を観ると語彙力が後退してしまう。しばらく余韻に浸り、言葉にしきれない想いでいっぱいになる。

今回そうなったのが、アニメの『平家物語』。

昨日の夜、全話観終えた。一緒に観ていた旦那さんは、「素晴らしい」と拍手していた。私がこのアニメを観たのは昨日で2回目。洞察力の鋭い旦那さんの考察で、1回目には分からなかったところも理解できた。

いつもの私はベッドに入れば夢の世界に直行するのに、昨日は元気いっぱいだった。眠そうにする旦那さんを無視して喋り続ける(普段は旦那さんの方がおしゃべり)。

このアニメの感想を一言で言うなら、世の中は諸行無常で盛者必衰。

栄華も、人の若さも、人間関係も、当たり前にある日常だって、明日にはどうなるか分からない。頑張って築き上げるには困難がいっぱいなのに、転落するのはいとも簡単であっけない。

後悔なく生きるのは難しいのかもしれないけど、先のことばかりを心配しなくてもいい。5つの幸せがあれば、それだけで人間は贅沢だと思う。その5つと「今」に責任を持ちながら、毎日を楽しんでいきたい。


あらすじ

史実『平家物語』をアニメ化。お話は史実に基づいている。オリジナルキャラクターは「びわ」という琵琶弾きの少女。びわが平氏に逆らったことで、父親を亡くす。未来が見える彼女は「お前たちはじき滅びる」と、平重盛(清盛の長男)に予言。滅びゆく平家がどう描かれているのか、びわと平家との関係、未来が見える彼女にできるところも見どころ。

アニメ『平家物語』のここがすき❤

◆映像が美しい

光の具合、四季の移ろいが美しい。暗闇に灯すろうそくや灯籠が、物語の雰囲気を暖かくしたり、不穏にしたり、ロマンチックにさせる。雪、桜、もみじ、椿などの花や景色もキレイ。「雅」という言葉がピッタリな映像。

◆主題歌の歌詞が良い

何回だって言うよ、世界は美しいよ
君がそれを諦めないからだよ
最終回のストーリーは初めから決まっていたとしても
今だけはここにあるよ 君のまま光ってゆけよ
いつか巡ってまた会おうよ
最終回のその後も 誰かが君と生きた記憶を語り継ぐでしょう
いつか笑ってまた会おうよ
永遠なんてないとしたら この最悪な時代もきっと続かないでしょう

羊文学「光るとき」

「最終回のストーリーは初めから決まっていたとしても今だけはここにあるよ」の部分が好き。

滅ぶことは分かっているし、避けられない。史実だってどこまでが本当か分からない。でも間違いなく彼らは過去に存在していた。私たちと同じように泣いて、笑って、怒って、一生懸命生きていたんだろうな。そこに思いを馳せるとロマンがある。

この物語を守っていくのは、今を生きる私たちなんだろうな。

◆名言にグッと来る

「闇も先も恐ろしくとも…今この時は、美しいの」(重盛)

「でも私は許すの。父上も、上皇様も法皇様もみんな。許すだなんて偉そうね。でも、どちらかがそう思わねば……憎しみ、争うしかない。でも、私は世界が苦しいだけじゃないって思いたい。だから私は許して、許して……許すの」(徳子)

「望まぬ運命が不幸とは限りませぬ。望みすぎて不幸になった者達を多く見てまいりました。得たものの代わりに何を失ったかも分からず、ずっと欲に振り回され…。わたくしは、泥の中でも咲く花になりとうございます」(徳子)

◆徳子と重盛を推したい

この2人は家族に翻弄されながらも、自分自身を貫いたのが良かった。

清盛の娘の徳子は、家族をほとんど失った。父親は徳子を出世に利用。結婚しても夫は他の人に思いを寄せているし、若くして夫は病死。守りたかった愛息子も…。徳子は何を思って生きたのか。憎しみを持たず心穏やかに生きるのは難しい。なのに全てを「許す」なんて。

重盛は「平家の良心」だと言われていて、人望もあった。清盛を諌めることができたのも重盛だった。彼のおかげで争いが防げたし、清盛が冷静になる機会もあった。自分の命に代えても平家の身を案じた重盛。

まだ書きたいことがあるけどネタバレになるから止めておく。徳子と重盛の信念と、相手を心から思いやる姿に感動した。

◆結末は分かっているけど、見ずにはいられない

オリジナルキャラのびわがいても、平家物語自体の結末は変わらない。結末は分かっているのに、見ずにはいられない。

 「この人、もうすぐ死ぬ」
 「この事件で平氏が衰退していく」

びわと同じように登場人物の先を見ていく。

◆びわの琵琶弾き語りに鳥肌が立つ

『平家物語』で盛り上がるシーンや見どころは、びわが琵琶で弾き語りをする。びわの声優を務める悠木碧さんがカッコ良くて鳥肌が立つ。彼女の声と琵琶の音色に聞き入る。

祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらはす
おごれる者も久しからず ただ春の夢のごとし
たけき者もつひには滅びぬ ひとへに風の前の塵に同じ

アニメを観た後、この文を読むとますます儚くて切ない。死ぬ必要がなかった人もいる。時代が違えば争いなんてせずに、自分の得意なものを楽しめたかもしれない。

あの時代の文化や思想を勉強しても、私なら名誉やプライドなんかかなぐり捨てて生きることを選びたい。それが難しい、「恥」だと分かっていても生き延びたい。

このアニメが好きすぎて、あつ森でびわの竜宮城を作った。

さいご:オススメの本と資料

史実の『平家物語』を知らなくても楽しめるけど、登場人物の関係性や当時の時代背景を知っていると、より味わいと深みがある。

平家の人たちは清盛が始まり、名前に「◯盛」がついてモリモリしているから、混乱してくる。ちなみに源氏の方は、「義◯」が多くてヨシヨシしている。

私はアニメを観る前に、現代語訳された読みやすそうな『平家物語』を読んだ。便覧片手に平氏と源氏の家系図を確認しながら読んで、やっと理解できた。

3年前に購入した。最近始めた歴史の勉強で大活躍中。


このアニメは、作家の古川日出男さんが現代語訳した『平家物語』を底本としている。そちらも読んでみたいけど、辞書くらい分厚いのと金額が高いので今は保留。

平家物語は、桜や花火のように儚い。でも美しい。繰り返し観たいアニメになった。


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