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「あなたは髪が黒いから、こっちに来ちゃだめ」

「マミーちゃん、あのね。きょうがっこうで、イヤなこといわれたんだよ」と、4歳の娘がしょんぼりした様子で話し始めました。

あら。何があったの?

「あのね、K(娘)とEはかみが黒いから、こっちに来ちゃだめ!っていわれたの」。

おっと、なんだそれ。

誰がそんなこと言ったの。

「エミー」。

詳しく話を聞いたところ、娘と、娘の友達のEがクラスの図書コーナーで遊んでいたんだそう。二人は仲良しで、クラスの女子の中でこの二人だけがアジア系です。

そこにエミーという女の子がやってきて、髪の色を理由に「ここじゃなくて違うところに行って」と言ったというのです。

さて。

こんなとき、親はどうしたらよいのでしょうか。


金色の髪に憧れる娘。

4歳の娘は、プリンセスが大好き。テレビや映画、絵本の影響であることは明らかですが、「プリンセス=金髪」というステレオタイプは、4歳の娘の中にもいつのまにか根付いてしまっていました。

プリンセスになりたいのに、自分はなぜ金髪じゃないのか。一時期、そんな疑問が娘を悲しませていました。

「Kのかみはなんで黒なの?」

髪の色はね、“遺伝“って言ってね、みんなママとパパの髪の色に似るんだよ。

「Kもゴールドのかみがよかった」

そうだね。金色の髪、ステキだね。でも、黒もステキなんだよ。美しい色なんだよ。

「そうなの?」

そうだよ。マミーは黒って美しいと思う。だってほら、絵の具でたくさんの色を混ぜたとき、何色になったっけ?

「くろー!」

ね。全部の色が入っているんだよ。

Kの先生、とっても優しくて綺麗で、プリンセスみたいだよね。先生の髪の色って、なんだっけ?

「くろー!」

ね。金の髪もステキ、黒の髪もステキ。それぞれステキなんだよ。

そんな話を何度かした後、娘はもう「金髪がよかった」とは言わないようになりました。そして私も、娘の髪の色について意識することはなくなっていたのですが・・・。


娘に持たせている3つの「魔法」。

娘の日本語は、4歳にしてはかなり達者!口答えも言い訳も、立派なものです。そんな日本語に比べると、英語では言いたいことが言えなくて、もどかしい想いをすることも。

そんな娘を現地校に通わせるにあたり、私は3つの魔法の言葉を持たせています。理想的な促しじゃないかもしれない。教育的観点での是非もわかりません。でも、娘の性格と私の経験から、こうしたら良いのではないか・・・という考えで、次のように伝えています。

1)イヤなことはイヤだと伝えること。
お友達と遊んでいる中で、イヤなことをされた場合。イヤなことをやめてもらえなかった場合。「Stop! I don't like it!(やめて!それは好きじゃない)」と言って、自分はイヤなんだ、ということをしっかり伝えましょう。

2)なぜなのか、質問すること。
イジワルなことを言われたら、なぜそんなことを言うのか聞いてみること。「You are mean, why are you mean?(あなたはイジワル。なんでイジワルするの?)」奥田民生さんだって、いじめっ子には言ってやりなと歌っている。これは私の経験上ですが、イジワルな人にはムキになって反論するより、冷静に「どうして?」がもっとも効果的です。

3)あなたを大切にしない人とは、付き合わなくてよい。
これは最終手段。何を言っても、何度伝えても、態度を改めてもらえなければ、「その子とは無理に付き合わなくていい」と伝えています。あなたのことが大好きなお友達は、たくさんいる。あなたのことを大切にしてくれない子とは、付き合わなくてもよろしい。その子のせいで嫌な気持ちになるのは、時間も心も、もったいない。

もちろん、毎日こんなことを得々として伝えているわけではありません。みんなと仲良く、楽しく、元気よく過ごすことができたら、それが一番。でもあまりに娘が困っていたり、考え込んでいるようだったら、「こうしてごらん」とそっと魔法を持たせて学校に送り出しているのです。


「髪が黒いからあっちに行け」の真意。

娘に向かって「髪が黒いから」と発言したエミー。他にも、「アジアン」とか「チャイニーズ」とか、そういう言葉も発していたとか。

正直、こんな差別的な発言に対しては、親としてのみならず、人として腹が立つ。先生や学校のマネジャーに報告し、エミーの親を呼び出し、真向から話し合ってやる。そんな煮えるような想いすら沸いてくる。

でもね。エミーのすべてを知っているわけではないけれど、私が見ている限り、エミーは娘のことを嫌いなわけではなさそう。

むしろ、朝クラスに娘を連れていくと「K!カモン、遊ぼう!」といって走り寄ってくる。お迎えに行くと庭で待っていて「K!一緒に走ろう!」と、学校の外の芝生で走り回って遊んでいたりもするのです。

もしかしたら、娘とEがあまりに仲が良いので、エミーは寂しい想いをしたのかもしれない。

娘ともっと遊びたくて、一緒になりたくて、逆に娘との違いに目がいったのかもしれない。

「そうか、髪の色が違うのか」と気づき、寂しい気持ちから「こっちに来ちゃだめ!」という発言が続いたのかな・・・。知らんけど。


ところで娘は、どう対応したのか。

で、あなたはエミーにそんなことを言われてどうしたの?

「えー。Kはね、なんにもいわなかったの。でもEがね、Stop doing that!(やめてよ)っておこってたよ」

そうか。それでいいです。

今回はEに助けられたね。

「でもさー、なんでエミーはそんなこといったんだろうね」

「くろって、ステキな色なのにね!」

そうだね。黒い髪、とってもステキなのにね。

これにて一件落着!と思いきや、口が達者な娘はこう続けます。

「でもさー。マミーのかみ、ほんとうは黒なのに、すっごい茶色いけど」

ギクッ!

はてさて。こんなとき、親はどうしたらよいのでしょうか。

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