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『君たちはどう生きるか』宮崎駿作品の物語の構造、登場人物の役割の共通点

ここへ来て宮﨑駿がもう一段ギアを上げてきた!

またしても自身の表現力を一段と引き上げ、
観客を魅了する作品を創り上げた。
過去の作品群で展開されてきたテーマをさらなる高みへと押し上げた一作である。

これまでの主要な作品群において、
クシャナやエボシ御前、湯婆婆、
グランマンマーレなどのキャラクターが象徴する自然界と人間界の対立は、単なる二元論ではない。

自然界は善、人間界は悪といった単純な図式に留まらず、
奪い合いながらも共存を模索するという複雑な現実を、
今、現代でも現在進行形で眼前にある現実を、
主人公を通じて観客に体験させる手法が取られてきた。

宮崎作品において、
自然界と人間界の間にある微妙なバランスは、
譲り合いによって共存が可能であることを示唆している。

n本作でも、船乗りの女性が登場し(名前は記憶にないが・・)、
その存在が主人公に現実を体感させる役割を果たしている。

教訓を口にするのではなく、
主人公に汗と血を流させながら、
自らの判断で行動することを学ばせるという、
これまでの作品同様の要素が強調されている。

また、物語の舞台設定は、
国、村、城、塔などの縦横の階層構造を持つことが多く、
主人公は成長して元の地に戻るというサイクルを繰り返す。

この基本的なプロットは、カオナシやわらわらといった魑魅魍魎たちが担う役割と相まって、宮崎作品のテーマ性を一貫させている。

「君たちはどう生きるか」という問いは、
宮崎作品の一貫した主題であるが、
本作ではさらに神話や国生みの物語、
モーゼの十戒やフェリーニ的要素も取り入れられている。

これにより、単に「どう生きるか」という個人的な問いを超え、
「少年よ、神話になれ」という壮大な命題が提示される。

この壮大さこそが、今回の作品で「ギアを上げた」と感じた要因である。

ダイナミックさやスピード感に富んだシークエンスは控えめであったが、
それでもナウシカの原作にも見られるように、
単一の主人公を超えた、
宇宙や万物を包含する物語を映像でエンターテインメントとして描き出す宮崎の力には、改めて驚嘆させられる。

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