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心の本棚

先日、読書日記に書いたとおり、最近また読書ができるようになりました。自分が自分を取り戻し始めた合図のように感じます。

思えば上の子が生まれてからの10年近い歳月、本というもの、読書という営みから遠ざかっていました。東京の小さな賃貸住宅の物理的に限られた空間に、本棚を置くスペースがなくなってしまったこと(日々増殖する子供のものに追いやられていくように)。あとは、私自身が本を読みたいという心持ちではなくなったことがありました。

乳幼児を抱えていると、現実世界でも常に喜びやら悲しみやらのジェットコースターに乗っているような心の状態で、物語の世界にひたりたいというような心持ちではなかったのです、私の場合ですが。

そしてご多分にもれず、子育て中の涙腺の緩さといったら。ひとたび心を揺さぶられたら、しばらく戻ってこれなるのも厄介。読みたくても自己防衛的に読まないでおいたということでもありました。

子供が生まれるずっと前、大学時代から会社員時代、本は生きるために必要なものでした。心を休ませてくれる休憩所であり、ときには逃げ込む場所であり、自分と同じ世界の見方を持つ誰かの存在を実感する場でした。

20代は壁一面に本棚を作ることに憧れ、小さな賃貸住宅の壁一面を本棚にして、本に見下ろされるように(見守られるように)そこで仕事をしていたものでした。

12年前の本棚の写真を見つけた。
愛すべき蔵書は300冊ほどだったと思う。

30代で子供が生まれることになり、もう少し広い場所へと引っ越しを考えたとき、冒頭のような事情で本を手放すことになりました。でもまたきっと、いつか再会するだろうという予感もありました。

ごくごく最近、きっかけが何だったか覚えてないのですが、また本が読めるようになりました。心が揺さぶられてもすぐに現実に戻ってこれるようになったし、涙腺も少しは引き締まってきたような。何より、いつなんどき赤子が泣くか、トイレすら自由にいけないという乳幼児期から確実にフェーズが変わったことを、喜びを嚙み締めつつ実感します。

本が戻ってきてくれた。ここまで10年近い月日を自分自身が頑張ってこれたこと、また読書を楽しめる日々が戻ってきてくれたことを、とてもうれしく思います。

最後にまた過去作品のご紹介。物語を楽しむ子供たちの姿を描きました。

「考える読書 第62回青少年読書感想文全国コンクール入賞作品集」カバーイラスト


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