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新しいビジネスを通じ、自分を変え、道を切り開く(1/3)

第1話:激動の時代変化の中でも、身近で変わらない願いを捕まえる

こんにちは、エネルギー・文化研究所の岡田直樹です。
私は昭和33年(1958)生まれの63歳、会社生活の大半を大阪ガスの100%子会社にて事業開発または他社の業容拡大、事業創造のお手伝いを行ってきた。加えて直近は、経済シンクタンクや商工会議所の出向の機会を得て、マクロの視点を持つことも出来た。そこでこの機会を借り、ここまでのキャリアを通じようやく見えてきたことを少し皆さんお伝えしたい。

1.プロローグ

世の中、新しいこと、新たな気付きは若者の特権とほめそやし、若者をその気にさせるだけの大人がいかに多いことか。が、それだけでいいのだろうか? ただ煽るばかりでなく、その道筋の困難さ、本当に必要な資質や経験も含め、知ってもらうべき点は知ってもらうこと。それこそが大切というのが、40年に及ぶ新規事業開発の体験から実感する点だ。
そこで、新しいビジネスにチャレンジしている起業家とのアライアンスに大手企業側は、何を期待しているかを考えてみたい。それも世の中の大きなニーズなのだ。

2.激動の時代変化の中でも、身近で変わらない願いを捕まえる

多くの大手企業では、オープンイノベーション活動を通じ、またシリコンバレーではファンドに出資もして新しいチャレンジャーに温かい視線を送っている。というのも、自社において既存事業をしっかりと守り育てるほどには、新しい価値を社会に提案していくことが得意ではないからだ。
大手都市ガス事業者の場合、今までどおり変わらぬ安心安全、エネルギー効率向上による省エネ、CO2排出削減など地道な努力の積み重ねを続けていく。それができてこその新展開であるが、やはり本業を徹底的に極めていくなかで染み出していく部分が必ずあるはず。そこはまさに、多くの皆さんからの客観的な提言提案を受け入れ、わが身を進化させるイノベーションの芽を探索し、挑戦し続けてきた。21世紀に入って早や20年、ガス事業そのものも大きく変化し、社会では一気にさまざまな業態がガスや電気を売る時代になった。 
そうした激しい変化は全業種に及ぶのではないだろうか。大きなそのムーブメントに立ち向かうため殆どの大手企業は新分野に参入すべく門戸は広げてはいる。しかしもちろん、ことはそう簡単ではない。新事業の開発は、単独で誰にもすぐできるというほど甘い世界ではない。オープンイノベーションやアライアンスによって手を取り合い、ともに未来に向かっていきたいのであるが、難しいことは分かっていても確実な手ごたえや、実現可能性への確信を欲しがるものだ。また、意外に思われるだろうが求められるのは、遠い未来を見据えた壮大な構想に基づくものよりも、もっと身近で容易に想像がつく、生活が少し便利になるようなビジネス。そんな普段の生活は不便だらけだという事に気付けないでいる私達に、その課題を明らかにし明日の暮らしに貢献しようと、ともに格闘する仲間が必要とされる。近年いわれる、変化が激しく先が見通せないVUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代であっても、変わらないものは絶対にあり、特に人間の身近な欲、幸せになりたい、便利になってほしいという感覚は、それほど変わっていないはずだからだ。

3.新しい世界観は全ての世代が共に作るべき

明日に向かって「この指とまれ」と声を上げるとき、呼びかける側は「門をたたくのは若者」という状況に期待している――そう世間は思うだろうが、果たしてそうなのだろうか。そこでの議論に、本当に若さは必須だろうか? 否、むしろ優しさや正義感といった本質的な点が大事なのではないだろうか? ならば、チャレンジャーの年齢はそれほど重要ではない。ビジネスのスケールも世界ビジネスでなくてよく、地域限定でもよい。こう聞けば、チャレンジへのハードルは大きくが下がるのではないだろうか。しかし先にも書いたように、信用を何より重んじる企業風土に合うよう、より慎重に完成度を高めていくプロセスについてきてもらわなければならない。少しまどろっこしいかもしれないがそうすることで初めて、大手企業は腰をあげ、打って出るための我が扉を開ける。そして、本当のチャレンジが市場で始まる。
いろいろと厳しいことを書いているが、私としてはもちろん、もっともっと多くのチャレンジャーがともに切磋琢磨し、成長し、大手企業が開く門戸にチャレンジして欲しいと思っている。ただ、これは矛盾するようだが、ベンチャーの皆さんがプラットフォーマーとしての大手企業を土台に大きく飛躍してもらうためには、大手企業はその事業に全幅の信頼を寄せ、社会に推薦できるまでに理解し惚れこまなければならず、ベンチャーの皆さんにとっては、狭き門にならざらるを得ないと思う。それはある意味、大手企業が〝家族〟として迎え入れるということだから厳しくなる。核家族ではなく「サザエさん」のような大家族を思い浮かべて欲しい。ご存じの通り、磯野家では3世代が同居し、それぞれの価値観で日頃起きていることをあれこれ語り合い、おのおのの育ちや立場を理解しその違いを認め合い、悲喜こもごも折り合いをつけている。あれこそが〝家族〟すなわちチームとしての、絆(あるべき姿)を確認している場面ではないだろうか。テーブルを囲む中に、きっと思わぬアイデアが更に生まれるのではないかと期待せざるを得ない。
大きな変化があまねく全世代に及ぶ今こそ、世代や性別、組織の大小の違いを超えて、異なる価値観をぶつけ合い、新たな価値を見出していくときだと確信する。必然的に大手企業は、上場を目指すところまで来ているチャレンジャーの皆さんに加えて、事業を立ち上げたばかりで売り上げもこれからという皆さんにまで付き合いが広がっていく。そう、正にチャンスは広がってきているのである。

4.エピローグ

これからの2回はこのチャンスをものにするために話していきたい。成功しているチャレンジャーとはどんな人なのか? 起業に漕ぎ出す準備のできている人はどんな資質と経験をもっているのか?、なぜそのビジネスを選んだのか? そうした点を中心に、今までの限られた経験をもとに綴っていくつもりだ。新しいビジネスを通じ、社会そして企業、そして何より自分自身を変えていこうとする、チャレンジャーの方の参考となれば幸いである。

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