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どうすれば日本の組織は変わるのか

こんにちは。エネルギー・文化研究所の鈴木隆です。
今回は、いつものマーケティングではなく、組織の話です。
組織といっても、組織図のような入れ物のことではありません。
組織を構成する人間の行動パターンのことです。

平成の「失われた30年」、変わらなかった日本の組織は、世界における地位を低下させ続けました。
先進国が平均で約2倍に経済成長するなかで、日本だけが停滞し続けました。世界のGDP(国内総生産)に占める日本のシェアは、17%から5%に低下しました。
世界の競争力ランキングも、日本はトップから下がり続け、64か国中35位になりました(スイス国際経営開発研究所(IMD))。
社員のやる気ランキングでも、いまや日本は世界125か国中124位です(米国ギャラップ社)。

外圧が加わらないと、日本は変わらないのでしょうか。
英雄が現れないと、組織は変わらないのでしょうか。

日本も組織も、人と人の関係から成り立っています。
人と人の関係が変われば、組織も日本も変わります。
新しい精神療法では、対話することで関係が変わり、問題が解決に向かいます。
そうした対話を積み重ねることこそ、遠回りのようで実は組織が変わる近道ではないでしょうか。

こうした問題意識から、2023年9月発行の『情報誌CEL』133号の特集「対話で変わる人と組織」では、新しい精神療法を手がかりに、どうすれば日本の組織は変わるのかについて考えました。

<情報誌CEL133号>

特集の記事は、以下の6本です。

(1)「対話を通じて、創造的な<場>を生み出す」では、中央大学の露木恵美子氏にインタビューしました。傾聴と対話と実践が心理的安全性を生み出し、職場の創造性を高めます。現場で体を動かし顧客と一緒に悩み考えることでこそ、ものごとの本質をつかむことができます。

(2)「『解決志向』で、組織は成長する」では、ソリューションフォーカスの青木安輝氏にインタビューし、広島県の廿日市市役所を取材しました。「解決志向」は望む未来を実現していくためのコミュニケーション技法であり、過去や現在の問題ではなく未来の解決に着目します。廿日市市役所では解決志向が浸透し、職員の意識調査の肯定的回答率も大きく伸びています。

(3)「ブリーフセラピーを活用した人間関係の改善」では、神奈川県立保健福祉大学の生田倫子氏に、企業の具体的な事例を取り上げ解説いただきました。ある会社では、仕事ができる熱血部長の厳しい指導で若手社員が大量に離職していました。部長が変わらなくても、部長不在時には問題が起こらないという「例外」を拡張することで退職がゼロになりました。

(4)「『対話』が生み出すイノベーション」では、ヒューマンバリューの兼清俊光氏にインタビューしました。対話によって関係の質を高めることが、思考の質を高め、行動の質を高め、結果の質を高めます。問題点を探して診断する従来の「ギャップアプローチ」ではなく、対話を繰り返す「生成的変革アプローチ」でこそイノベーションを生み出せます。

(5)「対話で劇的に変わる精神医療と多職種連携」では、たかぎクリニックの高木俊介氏に取材しました。「オープンダイアローグ(開かれた対話)」は、薬物に過度に頼らずとも対話することで急性期の症状から回復します。「未来語りのダイアローグ」は、対人支援において行き詰った状況を打開し多職種の連携を促します。

(6)「組織の慢性疾患を『対話』でセルフケア」では、埼玉大学の宇田川元一氏と対談しました。今日の日本社会が困っているのは「不確実な変化」ではなく「確実な変化」であり、日本企業は何をしたらいいのかよくわからない「慢性疾患」の状況にあります。目新しい手法に飛びつくのではなく、地道に対話を続け、みんなでセルフケアすることが有効です。

(1)~(6)の記事の内容は、こちらの電子ブックで自由に読むことができます。

令和も平成と同じ轍を踏み続け「失われた40年」「失われた50年」にならないために、『情報誌CEL』133号の特集「対話で変わる人と組織  ― 精神療法を手がかりに」がご参考になれば幸いです。

<CELのホームページ>
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