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「街中、バス運転手、タウンハウス」イギリス・ブライトン

ブライトン、はたまたイギリスの街というのはとても面白くて、いつ見ても飽きない。イギリスの基本的な交通手段はダブルデッカー(二階建てバス)で、僕はバスに乗る時にはいつも上に上がって窓から街を眺める。ふと眺めていると、多くの事に気付くのだが、その前にまずイギリスのバス事情について書きたい。

まずはバスのデザイン性だ。ブライトン&ホーブのバスの多くは底が赤色でその上がオレンジ色に塗っている。水色一色で塗られているバスもあるし、時にはバリエーションあるバスも見かけることがある。
ここ最近では007の新シリーズの公開に合わせて、ジェームスボンドが一面に載ったバスを見かけた。日本の統一感のあるバスとは違い、イギリスのバスはバラエティー豊富だ。もしブライトンに来る機会が有れば、街中を歩きまわってどんなバスがあるのかを観てみるのも面白いかもしれません。

ブライトンのダブルデッカー



もう一つはバスの運転手だ。イギリスのバス運転手は一言でいうとその仕事に自信をもっているように見える。メインの交通手段だけあって運転手の数も多い。そしてその多くがやさしさに満ちあふれている。バスに乗るときは気持ちよく挨拶をしてくれるし、降りるときにも気持ちよく挨拶をしてくれる。これは日本だと経験しなかったことだ。

そしてアクシデントに会った時でも彼らはスマートである。
夕方、僕が学校からホストファミリーの家に帰る途中、乗っていたバスのエンジンがかからなくなった。運転手は何度かエンジンをかけようと試みるもお手上げ状態。彼は乗客に向かって理由を説明し、次のバスを待ってほしいことを伝えた。少し冷えた日だったので、次のバスが車で中で待っているといいことも伝え、僕達は次のバスが来るまで時間をつぶした。乗降客の全員が何ひとつ不満を感じず、むしろ笑い話のようにとらえ、乗客の中には「まあこういう日もあるよね」と運転手と意気揚々と話し合っていた。ブリティッシュの器の大きさを感じた。

そして皆が巧みな運転テクニックを持っている。細い道の途中で対向車がやってきても、彼らは軽々と通り抜ける。僕がブライトンに着いてからまだ一度も交通事故の現場を見たことがない。バス運転手のみならず、イギリス全体の運転技術が高いのかもしれない。例えばイギリスには駐車場というものがなくて、基本的には路上駐車になる。なので縦列駐車のテクニックが抜群に良い。僕も国際免許を取ろうと考えたのだけれど、見事に整列した車たちを見て「これは無理だな」と諦めた。

話を戻すと、イギリスのバス運転手は仕事に誇りを持っているように見える。日本のバス運転手の多くは、たんなる運び屋としての仕事と割り切っていて、愛想がいいと感じたことがない。中には親切な方もいるのだろうけど、稀であるように思える。
一方でイギリスのバス運転手の多くはイギリスの交通を支えているゆえか、自信をもって仕事に取り組んでいる。特にビックリしたことが若い女性のドライバーをちらほら見かけたことだ。彼女たちはきっちりしたスーツとネクタイを着こなし、運転帽子を真っ直ぐ被っている。そして心から楽しそうに、ホスピタリティーを持ちながら運転をしている。ブリティッシュのドライバーからは「俺たちが街を機能ささせているだ」という矜持を感じる。



という訳で、ブライトンでバスに乗りながら街中を見渡すといろんなことに気付く。僕が一番興味深いと思ったことは建物だ。
ブライトン、はたまたイギリスの建物の多くは同じ形をしているタウンハウスになっている。レンガ造りに両開きの窓、三角屋根に煙突が基本。特に面白いのがタウンハウスが区域ごとに統一されていることだ。
僕の住むピースヘイブンという町は二階建ての薄茶色のレンガ作りで、三角屋根に小さな庭付きの家がどこまでも続いている。ある区域では白塗りでバルコニー付きのアパートメントがどこまでも続いている。綺麗に晴れた日にはバルコニーで気持ちよくタバコを吸っている姿を観ることができる。

もうひとつ面白いのが工事の仕方だ。ブライトンではどこを見渡しても改修工事をしている。日本のように建物を壊して、建て替えるのとは違い、イギリスではヴィンテージ品を後世まで残すみたいに丁寧に建物を引き継いでいく。日本で言う古民家のリノベーションに近いのかもしれない。
そこで日本と大きく違うのは鉄筋組がかなり簡素であることと、養生シートを使っていないことだ。
日本の鉄筋組はどんな事態にも耐えられるよう十分に整えられているのに対し、イギリスの鉄筋組はいつ倒れてもおかしくないような組み方をしている。そして土台も結構危ない。狭い道に面した工事なんかは特に恐ろしくて、鉄筋の土台が車道まで飛び出していることがしばしばある。歩道を歩くときは鉄筋の下を潜り抜けるから、最初はびくびくしながら通り抜けていた。ここまで簡素なのはイギリスでは地震が起きないからなのだろう。日本でこんな組み方をして、もし地震が起きたときには大惨事になりえない。
そして養生シートを使っていないので、建物の外観を損なうことを防いでいる。それは一つのオブジェのように映える。建物と文化が密着しているイギリスでは建物一つにも美しさが見える。

一枚目:ピースヘイブンの住宅街
二枚目:ホーブの住宅街と縦列駐車


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